糖尿病は早期に治療することで悪化や深刻な合併症を防ぐことができる可能性のある疾患です。
下記のような症状が出たら糖尿病のサインかもしれません。
定期的な健康診断の受診も重要ですが、「最近なんかおかしいかも?」と思うようなことがあれば下記のチェックリストを活用するなどして、セルフチェックを行ってください。
当てはまる項目が多い場合には糖尿病の可能性があります。
お近くの医療機関にご相談ください。
1. 肥満体形である
2. 異常に喉が渇くことがある
3. 尿の回数が増えたと感じる
4. アルコールをよく摂取する
5. 脂っこい食べ物を好んで食べる
6. 最近疲れやすいと感じる
7. 甘い食べ物をよく食べる
8.手足のしびれや冷えが気になる
9. 血糖値が高いと健診などで指摘を受けている
10. 運動が不足している
「血糖値」とは何か?
食事中にはさまざまな栄養素が含まれており、その中の一つに糖質があります。糖質は我々が生活していくうえで非常に重要な栄養素です。一言で糖質といっても食事中にはさまざまな種類の糖質が含まれますが、これらの糖質は体内で分解されて最終的にブドウ糖となり、日々の活動のエネルギーとして使われます。このブドウ糖が血液中に含まれている濃度のことを「血糖値」と言います。
糖尿病を発症する原因
血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪組織に取り込ませ血糖値を下げる働きを持つのが、膵臓から分泌される「インスリン」と呼ばれるホルモンです。インスリンは、私たちの身体の中で血糖値を下げることができる唯一のホルモンです。
何らかの原因によって、①このインスリンの分泌量が少ない場合(インスリン分泌障害)や、②効きが悪い場合(インスリン抵抗性の増大)に、血糖値が上昇します。このような状態が慢性的に続くのが糖尿病です。
糖尿病の種類について
糖尿病は1型と2型に大別されます。わが国では、9割が2型糖尿病です。
1型糖尿病は、膵臓のインスリンを分泌する部位に、自己免疫による炎症が起こる病気です。1型糖尿病では、最終的にはインスリンを分泌する能力が廃絶してしまい、体の外からインスリンを注射しなくては生きていけない状態になります。
2型糖尿病は、先ほどご説明をした「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性の増大」により、慢性的に血糖が高くなる病気です。
「インスリン抵抗性の増大」には、肥満や過食、運動不足、ストレスなどの環境因子(生活習慣の乱れ)も関与しています。そのため、2型糖尿病は「生活習慣病」のひとつと位置付けられているのです。
血糖値スパイクとは
食後1~2時間で血糖値が140mg/dl 以上に急上昇し、その後急降下する状態を血糖値スパイク(グルコーススパイク)と呼びます。血糖値スパイクが起きていても空腹時血糖は高くないので、血糖値の平均値を表すHbA1cの値は正常で、健康診断では発見されないことが多いのです。
血糖値スパイクを放置すると動脈硬化が進行しやすくなり、脳梗塞、心筋梗塞、がん、認知症などを発症する危険性が高くなります。また、2型糖尿病になるリスクが高まることもわかっています。
機能性低血糖について
血糖値はインスリンやグルカゴンなどの血糖調節ホルモンによって厳密にコントロールされているため、糖尿病で血糖降下剤やインスリンによる治療を受けている場合やインスリンを産生する腫瘍などの特殊な場合にしか低血糖は起きないと考えられてきました。
しかし、最近では「血糖調節異常」という病態の結果として低血糖症が起こっていると考えられる例が増えています。
精製された穀物(白米や白い小麦粉)や砂糖の普及が、血糖調節異常を引き起こす大きな要因と考えられています。これらの精製された炭水化物の摂取によって血糖値が急速に上昇することが、本来人体に備わっている血糖調節能力を低下させるのです。
血糖調節異常の結果、血糖が上がりすぎれば糖尿病を、下がりすぎれば機能性低血糖症を発症することになるわけです。
機能性低血糖症の原因としては、運動不足, ストレス, 糖質やアルコール、カフェインの過剰摂取, 腸内細菌叢の乱れ, 貧血, 甲状腺機能亢進症などがあります。これらの影響で膵臓のインスリン分泌の調節に異常が生じるのです。
血糖値が60mg/dl未満になると、まず集中力の低下、手の震え、頭痛、冷汗などの症状が出現します。そして、危機回避のためにノルアドレナリン・アドレナリンなど血糖を上昇させるホルモンが多量に分泌され、それらが緊張, イライラ, 怒り, 不安, 焦燥などの精神症状をひきおこすのです。
機能性低血糖症の診断にはブドウ糖負荷試験が必須です。上記のような症状でお悩みの方は是非一度ご相談下さい。
糖尿病は治るのか?
服薬なしで正常の血糖値を維持できることが糖尿病の寛解の定義とされています。 寛解とは病気がまるで治ったかのように通常の生活が送れるようになるということです。
食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が原因となっている2型糖尿病の場合には、食事療法や運動療法を徹底することによって 寛解の状態を達成することは十分に可能です。 そうなれば糖尿病は事実上治ったと言っても良いのではないでしょうか。
ただし血糖が上がりやすい 体質が消えたわけではありません。再び生活習慣が乱れれば糖尿病の状態に逆戻りしてしまうので、注意が必要です。