名古屋糖尿病相談室
監修医院:小早川医院

  • 名古屋市昭和区前山町1-19無料駐車場完備
  • ご予約・お問い合わせ 052-752-0800

糖尿病の治療

治療目標とする検査数値について

  1. 三大合併症(糖尿病性神経障害, 糖尿病性網膜症, 糖尿病性腎症)を予防するためにHbA1c<7.0を目標としています。
  2. 動脈硬化の進行を防ぐためには食後高血糖を起こさないことが大切です。食後2時間の血糖値<160を目標としています。
  3. 高齢者に関しては治療目標は臨機応変に決定しています。薬物療法やインスリン注射を行っている場合には、たとえHbA1cが高めであったとしても低血糖を起こさないことを最優先に考えます。低血糖発作は認知症発症の引き金になるからです。
    また、高齢者のストレスとなるような厳しい栄養指導も控えることにしています。過度のストレスも意欲低下や認知症発症につながるからです。

治療の基本は生活習慣の改善

2型糖尿病は生活習慣病です。ですからその治療も生活習慣の改善が中心となるべきです。「健康寿命を延ばす」という糖尿病治療本来の目標を達成するためには、もう一度原点に立ち返ってできるだけ薬に頼らずに食事療法+運動療法で糖尿病をコントロールする必要があります。
一方1型糖尿病は 膵臓がインスリンを分泌する能力が廃絶しているので、インスリン注射が生命維持のために必須です。食事療法, 運動療法は補助的に実施します。

食事療法について

食事療法は基本的に糖質制限食をお勧めしています。この方法は、甘いものや主食などの糖質の摂取量を減らしますが、その分脂質やたんぱく質の摂取量を増やすので満足感が得られやすいという特徴があります。食後高血糖が起こりにくく、体重が減りやすいのが特徴です。甘いものやフルーツも禁止というわけではなく、食後のデザートとして1日1回ぐらいは適量摂取していただく事が可能ですので、ストレスなく長期に続けやすい食事療法です。もともと糖尿病薬を服用している患者さんでは、糖質制限食の導入により薬の種類や量が減る場合が多く喜ばれています。
ただし、厳しすぎる糖質制限は死亡リスクを高め、癌や心血管イベント(脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞など)のリスクも増大させることがわかっています。また、糖質を減らす代わりに脂質を増やすといっても、健康長寿の実現のためには脂質の内容にもこだわる必要があります(ω3脂肪酸を増やしω6脂肪酸を減らす, オレイン酸を増やすなど)。ですから、自己流で糖質制限をするのではなく当院の管理栄養士による定期的な栄養指導を受けることをお勧めします。栄養指導によって食材の選び方に関する基本的な知識を身につけていただけば、家庭の食事でも外食であっても適切な糖質制限を続けることが可能になります。

運動療法について

有酸素運動;ウォーキング, ジョギング, サイクリング, 水泳, エアロビクスなど長時間継続して行える運動です。主に遅筋(赤筋)が使われます。赤筋は短時間に大きな力を出すことはできませんが、疲労しにくく長時間にわたって力を出し続けることが出来ます。加齢による萎縮が起こりにくい筋肉です。
持続的な運動の最中には、筋肉に蓄えられた糖質(グリコーゲン)や体脂肪が分解され筋肉を収縮させるためのエネルギーが産生されます。この時、大量の酸素が使われるので有酸素運動と呼ばれます。

無酸素運動;筋力トレーニング, 短距離走, 柔道等の格闘技など短時間に強い力を出す必要がある運動です。筋肉を収縮させるためのエネルギーを酸素を使わずに産生するので「無酸素運動」と呼ばれています。無酸素運動は短時間しか継続することが出来ませんが、短時間で大きな力を出すため筋線維の中でも速筋(白筋)が主に使われます。
速筋は年齢とともに萎縮しやすいのですが、無酸素運動により年齢に関係なく筋量・筋力を増大させることが可能です。速筋の量が減ってくると転倒リスクが増えることがわかっているので、健康長寿の実現のためにも無酸素運動は非常に重要です。

その他の生活上の注意

糖質制限食では糖質の少ないお酒(蒸留酒, 辛口の日本酒・ワインなど)は禁止していませんが、だからといって飲みすぎると過剰のアルコールによって肝臓の代謝が乱れ、糖質代謝, 脂質代謝に悪影響が及びます。その結果糖尿病のコントロール, 合併している高コレステロール血症や高中性脂肪血症, 脂肪肝などが悪化します。高血圧にも悪影響があります。
安全なアルコールの量には個人差がありますが、一日につきおおむね日本酒一合程度, ワインならワイングラス2杯程度, 焼酎なら0.5合程度です。週に数日の休肝日を設けることも大切です。

お薬での治療について

食事療法, 運動療法を十分に実施しても目標とする血糖コントロールが得られない場合、あるいは初診時から非常に血糖が高く全身状態が悪化する危険性がある場合には内服薬、または注射薬による治療を開始します。現在では様々な種類の薬が使用可能です。個々の患者さんの年齢, 体形, ライフスタイル, インスリン分泌の状態, 生活習慣, 腎臓・肝臓の機能などさまざまな要素を考慮して適切な治療薬を選択します。
当初から血糖値が極端に高いような場合には、まずは薬物療法を開始して同時に食事, 運動療法も実施します。血糖が落ち着いたところで徐々に薬剤を減量し、最終的に食事療法+運動療法だけでコントロール出来るようになるケースも多いので、必要な場合には薬剤使用を躊躇しすぎないほうが良い結果が得られます。

pagetop