最近の研究で、胃癌の原因はピロリ菌であることが明らかになりました。(例外的にピロリ菌が原因でないと考えられる胃癌もありますが、全体の1%程度にすぎません。)
ピロリ菌は胃酸の中で生存できる唯一の菌です。人間が食物を摂取する際には、それとともに多くの細菌やウイルスが胃の中に入ってきますが、ピロリ菌以外の病原体は胃酸によりすべて死んでしまいます。ピロリ菌だけは、アルカリ性の粘液を放出し胃酸を中和する能力があるため、生き残って胃に感染します。ピロリ菌が持続感染を起こすと、慢性胃炎(萎縮性胃炎)が起こります。これは強い症状はないものの、何十年にもわたってゆっくりと進行する胃炎です。そして胃癌の大部分がピロリ菌陽性の慢性胃炎(萎縮性胃炎)から発生します。日本人の半数がピロリ菌陽性ですから、この人たちは慢性胃炎(萎縮性胃炎)を経て胃癌になる危険性が高いわけです。残りの半分の人々は胃癌にはならないといえます。