最近「大人の発達障害」が注目されています。大人の発達障害の中核をなす疾患はなんといってもADHD(注意欠陥多動性障害)です。ADHDは子どもの頃に発症するのですが、その6割程度は大人になっても持ち越されることがわかっています。ADHDの特徴的な症状の一つとして「物をよく無くす」ことがあげられますが、これは認知症でも見られる症状です。ADHDの場合は注意力が低下しているために物を無くしたり忘れ物をしたりするのですが、認知症の場合にはもの忘れが原因となって物をしまった場所を忘れることにより物をなくしてしまうのです。ADHDの人は社会適応が難しく、若いころから生きづらさを感じて生きています。それが慢性的なストレスとなり、認知症になるリスクが高まるのではないかという説もあります。
高齢になって物をよく無くすようになった場合には、若いころから持ち越されたADHDによる症状か、認知症による症状か、あるいは両方の合併かを判断する必要があります。その結果によって、その後の経過や治療方針が変わってくるからです。
物をよく無くすことが気になったら、あるいは家族や周囲の人からそのような指摘をうけたら、ぜひ検査を受けてください。簡単な発達障害のスクリーニング検査、問診、認知機能検査でおおかたの診断がつきます。結果によっては、頭部CTを実施することもあります。発達障害が持ち越されているのか、認知症を発症しているのか、あるいは両方の合併なのかを明らかにすることにより、その後の対策や治療の方法をアドバイスすることが可能になります。また、それをご家族や周囲の方に伝えることで、不注意などの行動障害に対する理解を得ることもできます。
物をよく無くす、というのは認知症でよくある症状のひとつです。
認知症は早い段階で気付き、治療を開始することで進行を遅らせる、改善させることが期待できます。少しでも気になることがあれば、認知症外来を行っている小早川医院にご相談ください。