2012.02.26更新
糖尿病に効果のあるサプリメント・・・その3(亜鉛)
ビタミン・ミネラルの中には糖代謝に重要な役割を果たしているものがあります。今回は、その中で亜鉛を取り上げてみたいと思います。
糖尿病の患者さんは、尿中の亜鉛排泄量が増加しているため、亜鉛欠乏の傾向にあります。亜鉛は、インスリンの構成成分でもあり、ランゲルハンス島のβ細胞におけるインスリンの合成・貯蔵・分泌に関与しています。亜鉛が不足するとインスリンの分泌が減少して血糖値が上昇します。
亜鉛は、クロム、セレンとともに、糖尿病に対する効果が期待されています。インスリン抵抗性を有する2型糖尿病の患者さんに対して、これら3種の元素を12週間投与したところ、血糖値、インスリン濃度、インスリン抵抗性が低下したという報告があります。
亜鉛はプロマック® という胃薬にも含まれていますし、亜鉛のサプリメントという形で摂取することもできます。当院では、亜鉛欠乏のある糖尿病患者さんには、これらを摂取することをお勧めしています。
亜鉛は、体内で多様な働きをする重要なミネラルです。亜鉛の欠乏は糖尿病でない人にもいろいろな問題を引き起こします。次回は、亜鉛についてもう少し詳しくご説明したいと思います。
2012.02.24更新
糖尿病に効果のあるサプリメント・・・その2(ビタミンB群)
ビタミン・ミネラルの中には、糖代謝に重要な働きをしているものがあります。今回は、その中でビタミンB群を取り上げてみたいと思います。
ビタミンB1, B2, B6, ナイアシンなどのビタミンB群は糖代謝に不可欠で、そのうちどれか一つが欠けても問題が起こると言われています。特に、ビタミンB1は、糖代謝酵素の働きを助ける補酵素となって糖の代謝に関与し、ビタミンB6, ナイアシンなども、補酵素として糖代謝に大きな役割を果たしています。糖尿病の方には、ビタミンB群は必須のサプリメントです。
2012.02.23更新
糖尿病に効果のあるサプリメント・・・その1(クロム)
ビタミン・ミネラルの中にはは糖代謝に重要な働きをしているものがあります。今回は、その中でクロムを取り上げてみたいと思います。
クロムは、糖代謝・脂質代謝を正常に保つために重要な元素で、特に血糖値の調節に対する作用が注目されています。インスリンの補酵素としてインスリンの働きを助ける作用があるのです。ひじきやわかめといった海藻を中心に、食品には幅広く含まれているため、通常の食事で不足することはないはずですが、加工食品を多く摂取する現代人には不足する可能性のあるミネラルです。
米国のAndersonらは、180名の2型糖尿病患者にクロムを補給したところ、HbA1c, 空腹時血糖, 血中インスリン濃度はいずれも対照群に比べて有意に低下したと報告しています。つまり、クロムは糖尿病患者さんの血糖コントロールを改善したわけです。クロムが糖尿病に有効であるという報告は、他にも多数あります。糖尿病を予防したい方、あるいはすでに糖尿病になってしまった方には是非お勧めしたいサプリメントです。
2012.02.15更新
日本ローカーボ食研究会で発表を行いました
去る2月5日、日本ローカーボ食研究会第2回学術集会が名古屋駅近くのAP名古屋で開催されました。医師、栄養士、糖尿病患者、食品会社の関係者など、総勢45人が参加して、活発な議論が繰り広げられました。
私は、当院で糖質制限(低炭水化物)食を行って非常にうまくいった例と、課題が残った例を症例報告として発表してきました。
他の施設からは、糖質制限(低炭水化物)食の栄養指導における、いろいろなノウハウや、糖質制限食とアルコールとの関係など、実践的な内容の発表が多くなされ、明日からの外来にすぐに役立つものでした。
最後に、研究会代表の灰本クリニック 灰本 元先生が、糖質制限(低炭水化物)食に関する最近の海外の大規模研究のレビューをされ、「厳しい糖質制限より緩やかな糖質制限の方が死亡率が低くなる」ことを明らかにされました。そして「伝統的な日本食や地中海式食事療法から緩やかに炭水化物を制限すれば、最も理想的な食事療法に近づくのではないか」という持論を展開されました。
まだ発足して1年に満たない研究会ですが、糖尿病の治療をより合理的で、安全なものに変えていこうという熱意がみなぎった会であると感じました。
2012.02.11更新
炭水化物は糖尿病を悪化させるだけでなく老化を早める・・・その3
最近アメリカで行われた大規模研究の結果、次のような重要な事実が明らかになっています。
① 動物性脂肪(飽和脂肪酸)を減らして炭水化物に置き換える食事療法では、心臓病や脳卒中が増加する。
② このような食事療法では、脂肪を減らしたにもかかわらず、中性脂肪は上昇し善玉コレステロール(HDL-コレステロール)は 低下 してしまう。
従来は、脂質異常症や動脈硬化には動物性脂肪が悪者と考えられていたのですが、それよりも炭水化物の方が悪いということが証明されたわけです。
炭水化物(特に砂糖、白いパン、白米など精製されたもの)は習慣性があります。炭水化物を摂取して血液中のインスリン濃度が上昇すると、トリプトファンというアミノ酸の濃度も上昇することが知られています。トリプトファンは心の安定と関連する脳内の神経伝達物質であるセロトニンの原料です。ですから、炭水化物をたくさん摂取していた人が急にやめようとすると、強い空腹感、疲労感、不安、抑うつなどの「禁断症状」を経験することになります。
皆さんのまわりにも、「腹が減るといらいらする。スナックやソフトドリンクで気分が落ち着く」という人がいるのではないでしょうか?
こういう人は一種の「炭水化物依存症」であると言えます。そして、多くの場合肥満気味で、血圧、血糖、あるいは脂質の異常を持っています。
炭水化物依存症の人は動脈硬化、心臓病、脳卒中のリスクが高くなり、その結果、老化が早く進みやすいと言えます。そいう意味ではニコチン依存症と似ています。ヘビースモーカーが意を決して禁煙治療を受けるように、炭水化物依存の傾向のある方は、医師や栄養士の指導のもと、低炭水化物(糖質制限)食を実践する必要があります。
2012.02.06更新
炭水化物は糖尿病を悪化させるだけでなく老化を早める・・・その2
炭水化物の過剰摂取によって、ブドウ糖が蛋白質と結びついてできるAGE(advanced glycosylation end-products)が増加します。AGEは皮膚、動脈、腎臓、脳といった組織に蓄積し、さまざまな変化を引き起こします。皮膚に沈着したAGEは皮膚組織の褐色変性(老人斑)を引き起こします。また、脳に蓄積したAGEはアルツハイマー型認知症の原因にもなりえます。また、腎や動脈に沈着したAGEは局所の活性酸素をふやし、動脈硬化を促進させます。すなわち、炭水化物の過剰摂取は、AGEの蓄積を介して老化を招くわけです。・・・(次回に続く)
2012.01.31更新
炭水化物は糖尿病を悪化させるだけでなく老化を早める・・・その1
抗加齢医学の分野では、糖質や精製された炭水化物の消費はインスリンの分泌を刺激して、老化の進行を劇的に加速するというコンセンサスが得られており、砂糖を「白い悪魔」と呼んでいる研究者もいるほどです。インスリンは副腎皮質ステロイドと並んで老化を促進するホルモンなのです。
アメリカの抗加齢医学のリーダーの一人であるテリー・グロスマン博士は、その著書の中で次のように述べています。「ほとんどの人は 食事中の脂肪の方が糖分よりずっと問題だと信じている。自分が肥満しているのは脂肪の摂り過ぎが原因だと思っている。しかし多くの場合、肥っているのは脂肪を摂る量が少なすぎるからである。低脂肪食のマニアが約15年前にアメリカに出現して以来、肥満の発生率は32%にまで達している。国中で「大多数の」成人がかなり肥り過ぎである。習慣性を持つ食料、つまり糖分ほどこの問題に貢献しているものはない。」
この文章は、1985年ごろからアメリカで盛んになった低脂肪ダイエットのを批判したものです。脂肪は人に満腹感を与える唯一の栄養素なので、脂肪を減らすと頻繁に空腹を覚えるようになり、ついスナックとして糖分の多い食品を食べてしまう。こうした理由で、低脂肪ダイエットがかえって肥満を増やす結果になったわけです。・・・(次回に続く)
2012.01.11更新
糖尿病と癌・・・その3
1月4日と6日のブログでは、糖尿病と癌の関係についてお話してきました。まとめると、「糖尿病のコントロールが不良で、高血糖や高インスリン血症がおこれば、癌が増える。一方、糖尿病の治療薬でも多くの場合癌が増える。さらに、食後高血糖や高インスリン血症を抑えるための糖質制限(低炭水化物)食でも、動物性脂肪・蛋白質に偏り過ぎると癌が増える」、ということになります。こう書くと八方ふさがりのようではあります。しかし、糖質制限(低炭水化物)食は高血糖、高インスリン血症を改善し、糖尿病治療薬を減らすことにつながるわけですから、摂取する脂肪・蛋白質の質にさえ注意すれば、癌を減らす方向に働くと考えられます。従来の「高炭水化物低カロリー食」が食後高血糖を引き起こし、インスリンの追加分泌を刺激するのとは対照的です。
ハーバードの研究者たちの「動物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限食が癌による死亡を増やす」という論文を読んだ後も、私が患者さんに糖質制限(低炭水化物)食をお勧めする理由はここにあります。
2012.01.06更新
糖尿病と癌・・・その2
前回(1月4日)のブログで、糖尿病自体が発癌のリスクを高めるというお話をしました。今回は、糖尿病治療薬と癌の関係についてお話ししたいと思います。
現在、糖尿病治療に使われている薬としては、次のようなものがあります。
経口薬: SU剤、グリニド系、チアゾリジン系、αグルコシダーゼ阻害薬、DPPⅣ阻害薬
注射薬: インスリン、GLP-Ⅰ受容体作動薬
最近、海外でこれらの薬剤と癌の関係を明らかにする大規模研究が次々と行われ、その結果ビグアナイド系の一部のみが癌のリスクを低下させ、その他の薬剤は癌のリスクを増加させるかあるいは不変という結果が出ています。中でもSU剤と長時間作用型インスリンは癌のリスクを大幅に上昇させることが明らかになっています。DPP-Ⅳ阻害薬と膵癌の関連も指摘されています。
2012.01.04更新
糖尿病と癌・・・その1
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、前回までは、動物性脂肪・蛋白質に偏った糖質制限(低炭水化物)食が癌による死亡を増加させる可能性についてお話してきました。
一方、糖尿病による高血糖や高インスリン血症が発癌や癌による死亡を増加させるという研究結果もいくつか出てきています。
昨年6月には、九州大学の平川先生が、久山町で行った約2500人を対象とした前向きコホート研究の結果を米国糖尿病学会で発表されました。
これによれば、空腹時血糖が100mg/dl未満の人が癌で死亡する危険度を1とした場合、空腹時血糖値が高くなるほど癌で死亡
する危険度は高くなり、126mg/dl以上の人では危険度は2.1まで上昇していました。また、食後血糖が120mg/dl未満の人の危険度を1とすると、200mg/dl以上の人では危険度は2.0まで上昇していました。
この研究からは、空腹時血糖も食後血糖も高いほど、癌で死亡する確率は高くなるという結果が得られました。
また、2007年には国立がん研究センターから、「高インスリン血症が、日本人男性において明らかに大腸癌発症のリスクを高める」という報告がなされています。
また、食後高血糖が膵癌発症のリスクを高めるという海外の報告もいくつか見られます。
このように、糖尿病自体に起因する高血糖や高インスリン血症と発癌のリスク増加を結びつけるエビデンス(証拠)が次々と明らかになっています。
次回は、糖尿病治療薬と癌との関係について考えてみたいと思います。
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