糖尿病

2012.05.02更新

糖尿病治療の変革期・・低脂肪・低カロリーから糖質制限へ

最近、町のパン屋さんで糖質をほとんど含まない「ふすまパン」を見かけるようになりました。これまでも、ふすまパンはあったのですが、ふすまパン専業の業者が細々と扱っているだけでした。ところが、最近は普通のベーカリーで、従来の商品に混じってふすまパンが置かれるようになったのです。中には、「ふすまスウィーツ」を置いているところもあります。その他にも、糖質ゼロビール、糖質ゼロチューハイ、糖質ゼロの日本酒、糖質ゼロチョコレート、糖質ゼロアイスクリーム等々、糖質ゼロ食品がごく普通のスーパーマーケットや「デパ地下」に並ぶようになりました。まだ、少数ではありますが、糖質制限メニューを提供するレストランもでてきています。(東急ホテル系列の高級ホテル パンパシフィック横浜ベイホテルのレストランに糖質制限メニューが登場したのは象徴的な出来事だと思います)
糖質制限(低炭水化物)食を実践しやすい環境が徐々に整いつつあります。

これまで低脂肪・低カロリー・高炭水化物一辺倒であったアメリカ糖尿病学会のガイドラインが2002年に改訂され、「従来のカロリー制限食、糖質制限(低炭水化物)食、地中海式ダイエットの3種の食事療法は同等の有効性がある」と明記されました。以来、糖尿病の食事療法の流れは確実に糖質制限の方向に動き出しました。ヨーロッパにもこの流れは波及し、やや遅れて日本にも波及しつつあると言えるでしょう。

こうした流れを受けて、最近は、糖質制限が週刊誌、テレビなどのマスコミや健康雑誌に取り上げられる機会も増え、それを契機として糖質制限に興味を持つ患者さんも増えています。これ自体は悪いことではないのですが、同時に、民間療法的な偏った糖質制限が行われる危険性もはらんでいます。

こういう時期だからこそ、我々糖尿病治療に携わる医師は、目先の血糖や体重を下げるだけでなく、長期的に見て、本当に健康長寿に役立つ糖質制限(低炭水化物)食を普及させていかなければならないと思います。

2012.04.25更新

赤肉の食べ過ぎで死亡リスク上昇!・・極端な糖質制限に対する警鐘

ハーバード大学のPan博士らは、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉など)の摂取量が多いほど、全脂肪、心血管病による死亡、癌による死亡のリスクが上昇するが、赤肉を魚、鶏肉、ナッツ、豆類、低脂肪乳製品、全粒穀物で置き換えると死亡のリスクが低下するという研究結果を、著名な医学雑誌 ‘Archives of Internal Medicine’ に発表しました。

昨年12月18日のブログで「動物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限(低炭水化物)食では糖質制限を厳しくすればするほど、総死亡、脳卒中や心臓病による死亡、癌による死亡が増加した」というハーバード大学の研究成果をご紹介しました。この論文で、糖質制限のやり方を誤ると、かえって寿命を縮めてしまうという結果になりかねないことがわかったわけですが、上述のPan博士らの研究も、安易な糖質制限に警鐘を鳴らしたものといえるでしょう。健康雑誌などで喧伝されている「糖質制限食」では、「3食とも主食を抜くかわりに、ビーフステーキは食べ放題」といったような過激な記述が目立ちますが、このような食生活では、当然赤肉の摂取量が増えるわけで、決して安全な方法とは言えません。

やはり、和食や地中海式ダイエットを参考にして、植物性脂肪・蛋白質を中心とした、マイルドな糖質制限食を開発してゆく必要があります。

2012.04.08更新

年に1回は大腸癌検診を・・糖尿病、肥満の方は要注意!

食生活の欧米化とともに、わが国でも大腸癌が急速に増加しています。現在、胃癌を抜いて肺癌に次いで2番目に多い癌となっています。

大腸癌検診として広く行われている便潜血反応は、費用も低額(名古屋市在住の方は500円)で、簡便でありながら、確実に大腸癌による死亡者数を減らすことが分かっています。この検査により、早期癌の約50%、進行癌の約90%を発見することができます。

大腸癌の場合は、たとえ進行癌であっても5年生存率は約70%であり、手術で治る可能性が高いので、大腸癌検診を受ける意義は大きいと言えます。40才以上の方は、年1回は大腸癌検診を受けることを強くお勧めします!
そして、大腸癌検診で「便潜血が陽性」になった時は、必ず大腸内視鏡検査を受けてください。

糖尿病、肥満、喫煙は大腸癌のリスクを高めることが分かっています。これにあてはまる方は特に要注意です。

2012.03.31更新

当院スタッフの糖質制限(低炭水化物)食体験記・・その3

H23年10月X日

体重は相変わらず56kg台をうろうろしている。
もう少し落としたいので運動を採り入れることにした。
でも基本的に運動は苦手・・・
家の中でできる腹筋やスクワットなどを10分から20分程度やることにした。

H23年12月X日

運動を採り入れた成果が少しずつ出てきた。体重が再び落ち始めた。
ズボンのウエストがぶかぶかになってきた。

H23年1月X日

糖質制限を始めて以来、体重は7kg減った。コレステロール値も正常になった。

約7ヵ月間、糖質制限を実践してみて、優れた食事療法だと思いました。
食生活を楽しみながら、無理なくやれるところがよいと思います。

スタッフA

2012.03.31更新

当院スタッフの糖質制限(低炭水化物)食体験記・・その2

H23年7月X日

私が実行したのは、①夕食に炭水化物を食べない ②間食は控える この二つで
す。
①の主食を抜くというのは、おかずは普通に食べられるし全然楽勝でした。
②の間食はそれまで好きな時に好きなだけ食べていたから、ちょっとつらかったけ
れど、まったく食べないというわけじゃなく、自分へのご褒美としてたまには食べて
いたので、だんだんに慣れることができました。

平成23年9月X日

体重は2カ月で56kgまで落ちたが(-3kg)、それからは横ばいになってしまってい
る・・
少しフラストレーションを感じるようになりました。
ずっと食事療法を続けておられる糖尿病患者さんたちの苦労が少しわかったよう
な気がしました。

院長に相談したところ、「体重は直線的には下がらない。途中で必ず踊り場が来る
ものだから、こう着状態になってもあせらずに続けること」との答え。

気を取り直して、辛抱強く続けてみることにしました。(次回に続く)

スタッフA

2012.03.29更新

当院スタッフの糖質制限(低炭水化物)食体験記・・その1

当院のスタッフAさんが、糖質制限(低炭水化物)食に挑戦し、見事減量に成功しました。
その経過を3回にわたってお伝えします。(女性のダイエットの話題なので、匿名とさせ
ていただきます。あしからず・・)

平成23年6月X日

検診にて人生最高体重(59kg)を記録、コレステロール値も基準をオーバー!
これはまずいと思い院長に相談したところ、糖質制限食がいいんじゃないかと
教えてもらいました。

これは夕食の炭水化物を抜くだけで、面倒なカロリー計算は必要ないという
シンプルなものです。当院に通院している糖尿病患者さんのなかにも実践され
ている方がいて、成果が出ているようです。

これならできるんじゃないかとチャレンジを決意しました。(次回に続く)

スタッフA

2012.03.20更新

糖尿病コントロールの指標 HbA1c の国際標準化・・その2

(3月18日のブログより続く・・)
HbA1cの国際標準化に伴って、糖尿病コントロールの基準も以下のように変わってきます。

HbA1c(国際標準値) コントロール状態
        6.1以下        優
                     6.2~6.8        良
                     6.9~8.3        可
        8.4以上        不可

この基準で、優か良の状態を保っていれば、糖尿病の3大合併症(腎症、網膜症、神経障害)が起こる可能性は非常に低いと言えます。

2012.03.18更新

糖尿病コントロールの指標 HbA1c の国際標準化・・その1

HbA1cは代表的な血糖コントロールの指標であり、糖尿病の治療を受けている方はよくご存知の検査です。このHbA1cの測定法に関しては、これまで国際標準化がなされておらず、同じ検体であっても、日本で広く使用されている測定法による測定値(JDS値)と、米国を中心とする諸外国での測定値(NGSP値)を比較すると、JDS値がNGSP値より0.4低い値を示していました。

日本糖尿病学会では、糖尿病の診断・治療・研究のグローバル化を重視し、今回、HbA1cの国際標準化に踏み切りました。

JDS値とNGSP値の差を是正するために、JDS値に0.4を加えた値を国際標準値とし、4月1日以降、国内でのHbA1cの表記は国際標準値に統一することになりました。

以上をまとめると・・・   HbA1c(国際標準値)= HbA1c(JDS値) + 0.4
(但し、国際標準値はNGSP値に相当する値だが、
測定法はJDS値と同じであるから、NGSP値その
ものではない。)

ちなみに当院の院内検査では、従来よりNGSP値を使用していましたので、国際標準化の後も、測定値に変化はありません。

 

2012.03.10更新

当院でのローカーボ(糖質制限)食への取り組み・・その1

当院では1年ほど前から糖尿病やメタボリック症候群の患者さんにローカーボ(糖質制限・低炭水化物)食の栄養指導を行っています。医師の限られた診察時間の中ではわからない、患者さんの生活の様子や食事の嗜好等、ゆっくり対話しながら指導しています。時には、話が弾んで40分近くかかることもあります。患者さんの反応はおおむね良好で、今まで食事療法に全く興味のなかった方が、やる気になっていただけた例も多く、2回目の指導を受けた方もいらっしゃいます。「この食事療法は自分には無理」といった拒否反応はほとんどありません。

先日、名古屋で日本ローカーボ食研究会の第2回学術集会が開催され、当院からは院長と私を含めたスタッフ2人が参加しました。
今回の学術集会では、多くの施設からローカーボ食に導入されたいろいろな患者さんに関する発表がありましたが、各施設の苦労や創意工夫がぎっしり詰まっていて、大変勉強になりました。このような研究会で多くのケースを知ることが、今後の私たちの栄養指導のレベルアップにつながると思いました。また、ローカーボ食という新しい治療法を発展させていくためには、施設間の情報交換が大切であることも実感させられました。(次回に続く)

管理栄養士  小早川 宏江

2012.02.11更新

炭水化物は糖尿病を悪化させるだけでなく老化を早める・・・その3

最近アメリカで行われた大規模研究の結果、次のような重要な事実が明らかになっています。

① 動物性脂肪(飽和脂肪酸)を減らして炭水化物に置き換える食事療法では、心臓病や脳卒中が増加する。

② このような食事療法では、脂肪を減らしたにもかかわらず、中性脂肪は上昇し善玉コレステロール(HDL-コレステロール)は       低下 してしまう。

従来は、脂質異常症や動脈硬化には動物性脂肪が悪者と考えられていたのですが、それよりも炭水化物の方が悪いということが証明されたわけです。

炭水化物(特に砂糖、白いパン、白米など精製されたもの)は習慣性があります。炭水化物を摂取して血液中のインスリン濃度が上昇すると、トリプトファンというアミノ酸の濃度も上昇することが知られています。トリプトファンは心の安定と関連する脳内の神経伝達物質であるセロトニンの原料です。ですから、炭水化物をたくさん摂取していた人が急にやめようとすると、強い空腹感、疲労感、不安、抑うつなどの「禁断症状」を経験することになります。
皆さんのまわりにも、「腹が減るといらいらする。スナックやソフトドリンクで気分が落ち着く」という人がいるのではないでしょうか?
こういう人は一種の「炭水化物依存症」であると言えます。そして、多くの場合肥満気味で、血圧、血糖、あるいは脂質の異常を持っています。

炭水化物依存症の人は動脈硬化、心臓病、脳卒中のリスクが高くなり、その結果、老化が早く進みやすいと言えます。そいう意味ではニコチン依存症と似ています。ヘビースモーカーが意を決して禁煙治療を受けるように、炭水化物依存の傾向のある方は、医師や栄養士の指導のもと、低炭水化物(糖質制限)食を実践する必要があります。

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