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2012.07.24更新

日本ローカーボ食研究会の勉強会に参加しました

7月21日(土)の午後、ローカーボ食研究会の第3回定期勉強会が名古屋駅近くのルーセントタワーというモダンなビルの1室で開かれました。この地区でローカーボ食を診療に採り入れている医師を中心として、管理栄養士、薬剤師が総勢20名ほど集まりました。

この会ではローカーボ(糖質制限)食でうまくいかなかった例、問題が残った例を症例検討という形でディスカッションするのが恒例となっています。うまくいった例だけでなく、むしろそうでなかった例をしっかり検討することによって、我々の推進するローカーボ(糖質制限)食がより洗練されたものになってゆくと思います。

症例検討の後は、済生会中央病院内科部長の島田 朗先生に特別講演をしていただきました。テーマは「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」です。
島田先生は、日本では数少ない1型糖尿病の専門家であり、豊富な臨床経験と多くの臨床研究の業績をお持ちです。講演の内容も非常にわかりやすく、明日からの診療にすぐに役立つものでした。

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)は当初は普通の2型糖尿病の様な経過なのですが、何年もかかってゆっくりとすい臓のインスリン分泌能が低下して行き、最終的にはインスリンがないと生命が維持できない状態(インスリン依存状態)になってしまうタイプの糖尿病で、糖尿病と診断されて1年以内の人の内、15%程度がこのタイプであることがわかっているそうです。

SPIDDMのインスリン分泌能を温存し、インスリン依存状態になるまでの期間を延ばすためには、早い時期から少量のインスリンを使用するか、メトホルミンを使用するのが良いとのことでした。

1型糖尿病は自己免疫の病気であり、一方2型糖尿病は生活習慣に起因する糖代謝異常なので、病因は全く異なります。
しかし、SPIDDMとインスリン分泌の低下した2型糖尿病の病態はかなり良く似ているので、先生のこのような治療方針は、重症の2型糖尿病にも応用できるのではないかと感じました。

2012.07.22更新

糖質制限による2型糖尿病の治療

7月15日のブログでご説明したように、2型糖尿病の発症の原因は、インスリンの働きの悪さ(インスリン抵抗性)とすい臓がインスリンを分泌する能力の低下(インスリン分泌障害)です。
この2つの要素が様々な比率で組み合わさって、「肥満で高インスリン血症のある人」、「やせていてインスリン分泌能の低下している人」、「中肉中背でインスリン分泌能も平均的な人」など、いろいろな糖尿病の病像が出来上がります。しかし、いずれにも共通しているのは「トータルとしてインスリンの作用が不足している」ということです。

糖質制限(低炭水化物)食は、インスリン作用の不足の程度(=糖尿病の重症度)に応じて摂取する炭水化物の量を減らすという合理的な治療法なので、軽症から重症まで、幅広い患者さんに対応することができます。

2012.07.21更新

糖尿病の基礎(その8):食事療法に求められる条件とは?

「健康長寿」を実現するために糖尿病の食事療法はどうあるべきでしょうか?
そのカギはインスリンにあります。
合併症を起こさない範囲に血糖や脂質をコントロールすると同時に、血液中のインスリン濃度をできるだけ低く保つことにより動脈硬化、発癌、さらには老化を予防することが大切です。
この点を考慮して、2型糖尿病の食事療法に求められる条件を挙げてみたいと思います。

①食生活を楽しみつつ、ストレスなく長期に続けられる方法であること。
②肥満が改善すること
③食後高血糖を起こさないこと
④インスリン分泌をできる限り刺激しないこと
⑤糖尿病に合併する脂質異常症(血液中のLDL(悪玉)コレステロールの増加、中性脂肪の増加、HDL(善玉)コレステロールの減少)も同時に改善できること。

従来のカロリー制限食は、このような視点からみると合理的な食事療法とは言えません。一方、糖質制限(低炭水化物)食はこれらの条件を完全に満たしているわけではありませんが、全ての項目でカロリー制限食よりもすぐれていることは明白です。

私は糖質制限を導入することにより、最小限の薬物療法で健康長寿につながる糖尿病治療が実現できると考えています。

2012.07.19更新

糖尿病の基礎(その7):糖尿病治療の現状(2)

前回より続く・・・ 

しばらく食事療法を続けてもHbA1cが目標のレベルまで下がらないと、内服薬で治療しましょうということになります。それでもだめならいよいよインスリン注射です。

ここ10年程の間に、次々と糖尿病の新薬が発売され、インスリン製剤も随分とバリエーションが増えました。食事療法が実践できなくても、いろいろな薬を組み合わせることでHbA1cを目標のレベルまで下げることができる例も多くなってきました。一方で、「糖尿病治療の基本は食事療法」という言葉は形骸化し、食事療法の存在感がどんどん薄れていっているように見えます。

多くの薬を併用することにより医療費が増大し、患者さんの負担が増えるという弊害も出てきています。英国では1997年から10年間にわたって11万人の2型糖尿病患者を積極的に薬物治療した結果、医療費は2倍以上に上昇したにもかかわらず、HbA1cは0.1%しか改善しなかったというデータが出ています。
また、一部の 経口糖尿病薬やインスリン注射によってガンの発生やガンによる死亡が増加したという報告が増えてきています。薬物療法でHbA1cのコントロール目標を低く設定するほど死亡率が上昇するという報告もみられます。

薬物療法でいくら糖尿病のコントロールが良くなっても、ガンなどの病気を併発して生活の質が低下したり、寿命が縮まっては意味がありません。また、治療を長く続けるためには、経済的な負担が大きすぎるのも問題です。

「健康寿命を延ばす」という糖尿病治療本来の目標を達成するためには、もう一度原点に立ち返って、できるだけ薬に頼らずに、食事療法で糖尿病をコントロールすることを真剣に考える必要があります。

2012.07.18更新

糖尿病の基礎(その6):糖尿病治療の現状(1)

糖尿病治療の目標は何でしょうか?
糖尿病は現状では治癒の難しい病気です。ほとんどの場合、一生病気と向き合って治療を続けていかなければなりません。とすれば、治療の目標は「血糖値をうまくコントロールしながら、人生を楽しみ、元気に長生きする」、つまり健康寿命を延ばすことにあるのではないでしょうか?
顧みて、現状はどうでしょうか?
糖尿病と診断されると、まず医者に言われることは「糖尿病の治療の基本は一に食事療法、二に運動!」です。そして、栄養士からカロリー制限食を指導されます。中肉中背のデスクワーク中心の男性では総カロリー1600kcal, そのうち60%を炭水化物で摂取し、脂肪は20~25%以内に抑えるように指導されることが多いと思います。この食事内容ではボリュームが少なく、しかも三大栄養素の中で最も腹もちがよく、うまみのもとになる脂肪を制限されてしまうので、満足感が得にくく、続けられる人が少ないのが現状です。しかも、たとえこの食事療法を忠実に実践したとしても、炭水化物の摂取量が比較的多いため、食後の血糖値の上昇は抑えきれないのが現実です。

次回に続く・・・

2012.07.16更新

糖尿病の基礎(その5):日本人の2型糖尿病の特徴

「糖尿病イコール肥満」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、日本人では境界型糖尿病と診断された時点、あるいは糖尿病を発症した時点で肥満していない人が意外に多いのです。これは、インスリンを分泌する能力の問題であると考えられています。

もともとインスリン分泌能の大きい人では、インスリン抵抗性に対応して大量の追加分泌が起こり、「高インスリン血症」の状態になります。インスリンはブドウ糖を体脂肪に変える働きがありますので、当然肥満も進行します。一方、生まれつきインスリン分泌能の小さい人では、インスリン抵抗性があっても追加分泌の増加は小幅にとどまるため、高インスリン血症にはならず、肥満にもならないわけです。

欧米人はもともとインスリン分泌能が大きいので、高インスリン血症はあるが糖尿病にはなっていないという期間がかなり長くなり、糖尿病を発症した時点では高度の肥満になっているという結果になります。一方、日本人はインスリン分泌能が欧米人に比べて小さいため、そこまで太る前にインスリン分泌障害の状態となり、比較的早い時期に糖尿病を発症してしまいます。ですから、日本人の場合な肥満の糖尿病といっても「小太り」程度の人が多いわけです。

2012.07.15更新

糖尿病の基礎(その4):2型糖尿病発症のメカニズム

少し間があきましたが、「糖尿病の基礎」シリーズを再開します。今日は、2型糖尿病発症のメカニズムについてです。

血糖値を下げる作用のあるホルモンは、すい臓から分泌されるインスリンだけです。インスリンはブドウ糖を肝臓、筋肉、 脂肪、神経細胞に取り込ませることにより、血糖値を下げます。このインスリンの分泌量が少ない場合(インスリン分泌障害)、あるいはインスリンが効きにくい場合(インスリン抵抗性)には結果としてインスリンの作用が不足し、血糖値が上がります。

すい臓は空腹のときでも最低限のインスリンを分泌しています。これを「基礎分泌」と呼びます。炭水化物を含んだ食事をすると血糖が上がるので、すい臓はこれに対応してインスリンの分泌量を増やします。これを「追加分泌」と呼びます。

インスリンの追加分泌によって肝臓、筋肉、脂肪組織などへブドウ糖が取り込まれてエネルギーとして利用され、血糖は正常範囲内に保たれます。インスリンが追加分泌されても、肥満、運動不足、内臓脂肪の蓄積などでインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)があり、ブドウ糖が利用されにくくなると、 すい臓はさらにインスリンの追加分泌の量を増やして対応します。このようにインスリン抵抗性を「インスリンの追加分泌を増やす」という形でカバーできている間は血糖値は正常範囲内に保たれますが、この状態が長く続くと、すい臓は徐々に消耗します。そうなると、食後の血液中のブドウ糖の増加に対してインスリンの追加分泌が起こるタイミングが遅れたり、追加分泌の量が不十分となる、いわゆるインスリン分泌障害が起こってきます。その結果、食後に血糖値が異常に上昇する(食後高血糖)様になります。これがいわゆる「糖尿病予備軍」あるいは「境界型糖尿病」と呼ばれる状態です。
そして、この状態がさらに進行すると糖尿病の発症に至るわけです。

2012.07.13更新

認知症の予防(その4):認知症と食生活

認知症には生活習慣病の側面もあります。したがって、認知症の予防には食生活が大切です。

魚の摂取は認知症のリスクを低下させると報告されています。
青魚に含まれるオメガ3脂肪酸であるDHAはアルツハイマー型認知症を予防するとの報告があります。

肉に多く含まれるオメガ6脂肪酸であるアラキドン酸は記憶機能を改善するという報告もあります。

野菜の葉酸やビタミンB群には血中ホモシステインを低下させてアルツハイマー型認知症や脳血管性
認知症のリスクを低下させるという報告があります。

緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンや、コーヒーに含まれるカフェインもアルツハイマー
型認知症を予防することが知られています。

九州大学の久山町研究では、BMI30以上の肥満の人は認知症になるリスクが2倍高いことが示されました。
中年期に肥満を予防・是正しておくことが認知症の予防につながると言えるでしょう。

2012.07.11更新

認知症の予防(その3):認知症と運動

運動のアルツハイマー型認知症・脳血管性認知症に対する予防効果は多くの疫学研究で明らかにされています。
中年期から、少し汗をかく程度の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギングなど)を週2回以上、30分程度行うことで高齢者となってからのアルツハイマー型認知症の発症リスクが1/3に減少するという報告があります。

また、人を対象とする介入研究で、有酸素運動による海馬(新しい記憶の形成をつかさどる部分)の体積の増加と記憶力向上の効果が示されています。

認知症予防のためには、中年期からウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を継続して行うのが良いでしょう。
これは、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防・治療にもつながるので、一石二鳥の方法といえます。

2012.07.09更新

認知症の予防(その2):認知症と高血圧

高血圧症は脳血管障害を起こしやすくするので、それを介して脳血管性認知症のリスクを高めます。

九州大学の久山町研究では、32年間の追跡の結果、中年期に高血圧であった人では、老年期の血圧にかかわらず、脳血管性認知症を発症するリスクが約5倍高いという結果が出ており、中年期の血圧管理の重要性が示されました。

アルツハイマー型認知症に関しても、脳梗塞などの虚血性病変の合併は発症を早めることが知られており、高血圧症はアルツハイマー型認知症のリスクを高めると考えられます。

このように血圧のコントロールは、認知症の予防につながると言えます。中でも、ARB(angiotensin Ⅱ receptor blocker)という種類の降圧薬は、血圧をコントロールすると同時に、認知機能の低下を抑制する作用を持つことが知られています。


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