ブログ

2012.01.06更新

糖尿病と癌・・・その2

前回(1月4日)のブログで、糖尿病自体が発癌のリスクを高めるというお話をしました。今回は、糖尿病治療薬と癌の関係についてお話ししたいと思います。

現在、糖尿病治療に使われている薬としては、次のようなものがあります。

経口薬: SU剤、グリニド系、チアゾリジン系、αグルコシダーゼ阻害薬、DPPⅣ阻害薬

注射薬: インスリン、GLP-Ⅰ受容体作動薬

最近、海外でこれらの薬剤と癌の関係を明らかにする大規模研究が次々と行われ、その結果ビグアナイド系の一部のみが癌のリスクを低下させ、その他の薬剤は癌のリスクを増加させるかあるいは不変という結果が出ています。中でもSU剤と長時間作用型インスリンは癌のリスクを大幅に上昇させることが明らかになっています。DPP-Ⅳ阻害薬と膵癌の関連も指摘されています。

2012.01.04更新

糖尿病と癌・・・その1

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、前回までは、動物性脂肪・蛋白質に偏った糖質制限(低炭水化物)食が癌による死亡を増加させる可能性についてお話してきました。
一方、糖尿病による高血糖や高インスリン血症が発癌や癌による死亡を増加させるという研究結果もいくつか出てきています。

昨年6月には、九州大学の平川先生が、久山町で行った約2500人を対象とした前向きコホート研究の結果を米国糖尿病学会で発表されました。
これによれば、空腹時血糖が100mg/dl未満の人が癌で死亡する危険度を1とした場合、空腹時血糖値が高くなるほど癌で死亡
する危険度は高くなり、126mg/dl以上の人では危険度は2.1まで上昇していました。また、食後血糖が120mg/dl未満の人の危険度を1とすると、200mg/dl以上の人では危険度は2.0まで上昇していました。
この研究からは、空腹時血糖も食後血糖も高いほど、癌で死亡する確率は高くなるという結果が得られました。

また、2007年には国立がん研究センターから、「高インスリン血症が、日本人男性において明らかに大腸癌発症のリスクを高める」という報告がなされています。

また、食後高血糖が膵癌発症のリスクを高めるという海外の報告もいくつか見られます。

このように、糖尿病自体に起因する高血糖や高インスリン血症と発癌のリスク増加を結びつけるエビデンス(証拠)が次々と明らかになっています。

次回は、糖尿病治療薬と癌との関係について考えてみたいと思います。

 

2011.12.25更新

健康長寿のための糖質制限(低炭水化物)食・・その3

我々日本人が糖質制限(低炭水化物)食を実践する際に、赤肉(豚肉、牛肉、羊肉など)の摂取量の増加や摂取する脂肪酸の質の低下を招かないようにするにはどうしたらよいでしょうか?私は、有名な「地中海ダイエット」の中にこの問題を解決するヒントがあると考えています。

地中海ダイエットとは、昔から長寿の人が多いことで知られていた地中海沿岸地域の伝統的な食事スタイルです。野菜、果物、ナッツ類、豆類、精製度の低い穀類(全粒粉のパン・パスタなど)を多く摂取し、魚、鶏肉、乳製品を中等量摂取し、適量のワインを食事とともに摂取します。赤肉、卵の摂取は減らします。オリーブオイルを主要な油脂として日常的に使用します。2008年には、イタリアの研究者たちによって、「地中海ダイエットを忠実に実践すると、総死亡、心臓病や脳卒中による死亡、癌になるリスク、癌による死亡、パーキンソン病とアルツハイマー病にかかるリスクが全て低下する」という研究成果が発表されました。

こうした結果をふまえて、地中海ダイエットの考え方を採り入れれば、赤肉の摂取量の増加や脂肪酸の質の低下を招くことなく、植物性脂肪・蛋白質を軸とした糖質制限(低炭水化物)食が実現できると、私は考えています。但し、地中化ダイエットでは果物や精制度の低い穀物などの炭水化物の摂取量がやや多い(総カロリーの50~60%) ので、糖質制限(低炭水化物)食とするためにはこれらを減らし、その分脂肪、蛋白質を増やさなければなりません。また、主要な油脂がオリーブオイルのみというのも日本人にはなじみにくいでしょう。そこで、大豆製品(納豆、豆腐、あげ、豆乳、ゆば、おからなど)採り入れたらどうでしょうか。特に、豆腐は、冷奴や湯豆腐にすれば肉料理などの濃い味や脂気を中和することができ、主食のかわりになりうる食品だと思います。また、加熱用の油脂として、オリーブオイル以外に、比較的脂肪酸組成が似ているなたね油やごま油、非加熱用(ドレッシングなど)の油脂としてはω3脂肪酸を多く含有するえごま油などを利用するのもよいでしょう。また、動物性脂肪・蛋白質の中でも赤肉の比率を減らすために、魚の摂取を増やす必要があります。脂ののった魚を摂取することは、ω3脂肪酸の比率を増やすことにもつながります。このようにアレンジすれば和食志向の人にも受け入れられるのではないでしょうか

この方法は、嗜好の問題もあり、通常の食事よりもコストもかかるので、最初から全ての患者さんに適用できるとは思えません。
当院では、糖質制限(低炭水化物)食を始めていただく際には、とにかく炭水化物を目標レベルまで減らし、その分脂肪・蛋白質(動物性・植物性にこだわらない)を増やして食事の満足感を得ていただきながら治療効果を実感していただく、というポイントに集中して、シンプルな栄養指導を行っています。2回目以降の栄養指導で、糖質制限(低炭水化物)食が軌道に乗ってきたところで、植物性脂肪・蛋白質の摂取量を増加させ、良質な脂肪(ω3脂肪酸や一価不飽和脂肪酸)をより多く摂取していただくような指導を追加して、徐々に洗練された糖質制限(低炭水化物)食を完成させてゆきます。

治療効果が出て、薬の量が減り、通院回数や検査の頻度も減ってゆけば、食事のコストの増加分は医療費の減少分で十分に相殺できると考えています。

 

2011.12.23更新

健康長寿のための糖質制限(低炭水化物)食・・その2

12月18日のブログで、「動物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限(低炭水化物)食では、通常のカロリー制限食に比べて総死亡、脳卒中や心臓病による死亡および癌による死亡は増加したが、植物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限(低炭水化物)食では総死亡、脳卒中や心臓病による死亡は減少し、癌による死亡については同等であった」というハーバード大学の研究結果をご紹介しました。なぜこのような結果が出たのでしょうか?

冷静に考えてみると、欧米人に動物性脂肪・蛋白質を中心とする糖質制限(低炭水化物)食を実践させれば、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉など)の摂取量が増えること、摂取する脂肪酸のなかで飽和脂肪酸の割合が増え不飽和脂肪酸(特にω3脂肪酸)の割合が減ることは容易に想像できます。
赤肉が総死亡、脳卒中や心臓病による死亡、癌による死亡を増加させること、飽和脂肪酸摂取量の増加が脳卒中や心臓病による死亡の増加につながることはほぼ証明されていますので、ハーバードの研究結果はむしろ当然の帰結と言えるのではないでしょうか。

では、我々日本人が糖質制限(低炭水化物)食を実践する際に、赤肉の摂取量の増加や、摂取する脂肪酸の質の低下を招かないようにするにはどうしたらよいでしょうか?次回は、この問題の解決策についてお話ししたいと思います。

2011.12.18更新

健康長寿のための糖質制限(低炭水化物)食・・その1

当院では、糖尿病、メタボリック症候群、脂質異常症、肥満の食事療法として糖質制限(低炭水化物)食に力を入れています。この方法は従来の総カロリーを制限する食事療法に比べて血糖・肥満度・脂質の改善に関しては有利であることは明らかになっています。
この方法の安全性に関する重要な研究結果が、昨年秋にハーバード大学から報告されました。その内容は「動物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限(低炭水化物)食では、通常のカロリー制限食に比べて総死亡、脳卒中や心臓病による死亡、および癌による死亡が増加したが、植物性脂肪・蛋白質を中心とした糖質制限(低炭水化物)食では総死亡、脳卒中や心臓病による死亡は減少し、癌による死亡は同等であった。」というものでした。この結果は、安易な糖質制限に警鐘を鳴らすものでありました。糖質制限(低炭水化物)食で血糖・脂質・肥満が改善したとしても、寿命が縮まってしまっては意味がないわけです。そこで、摂取する脂肪・蛋白質の内容が問題になってきます。
現代の食生活では、糖質を制限して、その分脂肪や蛋白質の摂取量を増やすという食事療法を行った場合、どうしても肉食が増え、摂取する脂肪の内容が動脈硬化を促進させる方向(すなわち、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が増える方向)に偏りがちです。
当院では、単に炭水化物を制限して、脂肪・蛋白質の摂取量を増やすというだけでなく、その脂肪・蛋白質が動物性のものに偏らないような栄養指導を心がけています。植物性脂肪・蛋白質を十分に摂取し、動物性脂肪・蛋白質についても、肉と魚のバランスが取れた糖質制限(低炭水化物)食の確立が最終的な目標です。それは、単に糖尿病やメタボリック症候群の食事療法にとどまらず、一生を通じて実践できる、健康長寿のための食習慣と言えるものになると思います。

2011.12.09更新

生活習慣病と老化

人間の身体機能は20歳~25歳の青年期をを過ぎると衰え始め、年齢とともに低下して行きます。これが「老化」です。
老化はすべての人に起こる現象ではありますが、その程度には大きな個人差があります。私は内科医として多くの生活習慣病の患者さんを治療してきましたが、複数の生活習慣病があり、それらがうまくコントロールされていない人は老化のスピードが速いという実感があります。
生活習慣病は、以前は「成人病」と呼ばれていました。40歳前後から発症し、働き盛りの人に多い病気ということでそのように呼ばれていたのです。しかし、年齢ではなく「生活習慣」が原因であることが分かり、より適切な名称として、平成8年に「生活習慣病」と改められました。
生活習慣病の代表的なものとして、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脳血管障害、心臓病 (狭心症、心筋梗塞)、がんなどがあります。このうち糖尿病、高血圧、脂質異常症は、自覚症状はないことが多く、長い経過で徐々に進行し、全身の動脈硬化(=血管の老化)を引き起こします。動脈硬化は脳血管障害、狭心症・心筋梗塞などの心臓病の原因となります。脳血管障害は認知症の原因となり、心筋梗塞は心臓の働きを低下させるため、日常生活の活動度(ADL)を低下させます。つまり、生活習慣病が老化を促進し、それが新たな生活習慣病の発症につながり、老化がさらに進行するという悪循環が生じやすいのです。この悪循環を断ち切るためには、まず、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をしっかりと予防・治療する必要があります。健診などで血圧、血糖、コレステロール、中性脂肪などの異常を指摘された方は、たとえ症状がなくても、早めに内科を受診されることをお勧めします。

高血圧、糖尿病、脂質異常症の予防・治療は「アンチエイジング(老化予防)」の基本と言えるでしょう。

2011.11.02更新

名古屋市昭和区にある小早川医院です

これからブログを使って情報を発信していきます。
よろしくお願い致します。


SEARCH


ARCHIVE


  • 院長ブログ
  • スタッフブログ
  • 小早川医院 Facebook
  • インスタグラム
  • 公式LINEアカウント
  • 052-752-0800
  • メールでのお問い合わせ
pagetop