2013.05.22
糖尿病学会がHbA1cによる血糖管理基準を改定!
従来は、血糖管理のためのHbA1cの指標として次のような5つの区分が設定されていました。
①優 6.2% 未満
②良 6.2~6.9%未満
③可(不十分) 6.9~7.4% 未満
④可(不良) 7.4~8.4% 未満
⑤不可 8.4% 以上
これに対し、6月1日から施行される新しい血糖管理基準では下記の様な3つのカテゴリーが設定され、HbA1cの目標値もきりの良い値にそろえられました。また、「優・良・可」という学校の通信簿の様な名称が消えて、患者さんにも受け入れられやすくなりました。
(1)血糖正常化を目指す際の目標 6.0%未満
(2)合併症予防のための目標 7.0%未満
(3)治療強化が困難な際の目標 8.0%未満
(1)は適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標値。(2)については対応する血糖値として、空腹時血糖値130mg/dl, 食後2時間の血糖値 180mg/dlがおおよその目安として付記されています。(3)は低血糖などにより治療の強化が難しい場合の目標です。
今回発表された新基準は、私のように糖質制限(低炭水化物)食を推進している医師にとっては、実際の臨床の場での感覚に近いものであり、良い方向に改訂されたと思います。
1日1食のみ炭水化物を抜く程度の無理のない糖質制限食と運動のみで治療している場合には、HbA1cは正常範囲を目指してよいと思います。しかし、2食、3食で炭水化物を抜くような厳しい糖質制限や多くの種類の糖尿病薬の併用療法でHbA1cの正常化を目指すのは低血糖や長期的な副作用(死亡率の上昇、発がんの増加、心血管疾患の増加など)の危険性が増すので、望ましくないでしょう。過去のデータを見ても、実際の臨床の現場でもHbA1c 7.0未満では神経障害、網膜症、腎症といった糖尿病合併症が進行する危険性は低いので、治療はHbA1cをこの範囲に保つのに必要な最低限の糖質制限、あるいは最低限の薬物治療にとどめるべきです。やみくもにHbA1cの正常化を目指すのは医者の自己満足でしかないと思います。
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