2012.07.01
糖尿病の基礎(その2):高インスリン血症とは
インスリンは両刃の剣です。炭水化物を大量に食べても、すい臓からそれに見合った多量のインスリンが分泌され血糖が上がり過ぎるのを防いで、生体の恒常性を保ちます。
しかし、一方でインスリンの分泌が過剰な状態が続き、血液中のインスリン濃度が高くなる(高インスリン血症)と、肝臓での中性脂肪の合成が活発になって血液中の中性脂肪が増え、腎臓の尿細管でのナトリウムの再吸収が増えてナトリウムが体内に貯留するために高血圧となり、また、血管の内皮細胞が増殖することによって動脈硬化が進みます。
また、厚生労働省研究班の大規模研究で、高インスリン血症のある人は、そうでない人に比べて最大3.2倍、大腸癌にかかりやすいという結果が出ています。血液中のインスリン濃度が高すぎる状態が続くと、細胞増殖を促進するIGF-1(インスリン様成長因子1)の働きが活発になり、大腸癌が発生するリスクが高くなると考えられています。
さらに、同じ研究班のもう一つの大規模研究によれば、糖尿病にかかったことのある人が何らかのガンにかかる確率は、そうでない人に比べて男性で1.27倍、女性で1.21倍であるという結果が出ています。肥満や運動不足のある糖尿病ではインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)があり、それを補うために高インスリン血漿が生じ、これが、腫瘍細胞の増殖を刺激してガンの発生に関与すると考えられています
高インスリン血症は、ガン、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の原因となり、老化を促進する因子であると言えるでしょう。
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