2012.09.12
糖質制限で血糖コントロールが良くなる本当の理由
最近、糖尿病の新しい食事療法として糖質制限(低炭水化物)食が注目を集めており、週刊誌やテレビ番組で取り上げられることも多くなりました。
糖質制限に関する書籍もたくさん出版されています。その多くが、糖質摂取量を1日130g以下に抑えるというような厳しい制限を勧めています。「糖質を摂取すると血糖値が上がるので摂取しなければ良い。」といった短絡的な論調も目立ちます。しかし、これは糖質制限食で長期的に血糖コントロールが改善するメカニズムとは別物です。
では、なぜ糖質制限で血糖コントロールが良くなるのでしょうか?
私の経験では、糖質制限を行うと多くの場合インスリン分泌が改善します。これは、糖質制限により膵臓に対するインスリン分泌刺激が少なくなり、疲弊しかかった膵臓を休息させることができるためと考えられます。
また、糖質制限でインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)も改善します。
夕食のみ炭水化物を抜く程度のマイルドな糖質制限(低炭水化物)食でも、数か月以上続けると徐々に血糖コントロールが改善し、HbA1cが下がってくるのはこうした理由によると考えています。マイルドな糖質制限を続けていると、糖質をある程度摂取しても食後血糖が上がりにくくなるのです。また、重症の糖尿病で当初は3食とも糖質を抜く厳しい制限で治療を始めた場合でも、しだいに2食制限→1食制限と制限を緩めることができる場合が多いのです。これも糖質制限によるインスリン分泌とインスリン抵抗性の改善によると考えています。
私がマイルドな糖質制限をお勧めするのにはこのような背景があります。血液中にケトン体が増えるような厳しい糖質制限は、確かに素早く血糖を下げる効果はありますが、長期的に見た安全性に疑問が残ります。以前のブログでもお話ししたように、厳しい糖質制限によって脂質が動物性脂肪に偏り過ぎたり、赤肉の摂取量が増えすぎることにより、心血管死やガンによる死亡が増える可能性があります。また、厳しい糖質制限によって増加した血液中のケトン体が有害な作用を起こす可能性も否定はできないのです。
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