2012.09.24
どの程度の糖質制限が適切か?
最近、糖質制限がマスコミに取り上げられる機会が増え、ちょっとしたブームの様相を呈しています。書店で糖質制限に関する雑誌や書籍を目にすることも多くなりました。その内容は多くの場合、糖質(炭水化物)を摂取することを罪悪のようにとらえ、3食とも炭水化物を抜く、あるいは一日の炭水化物摂取量を130g以内に抑えるなど、厳しい糖質制限を推奨しており、あたかも糖質制限が万能の食事療法であるかのような表現がなされています。私はこのような状況に危機感を感じています。三大栄養素の一角を占める炭水化物は摂取していけないのではなく、適切な量を摂取すべきなのです。
昨日のブログでご紹介したスウェーデンの大規模研究をはじめとして、糖質制限(低炭水化物)食を厳しくすればするほど総死亡、心血管病の発症やそれによる死亡、癌の発症やそれによる死亡が増えるという報告が次々となされています。ハーバードのFungらの研究では植物性脂肪・タンパク質中心の糖質制限を行えば、このような弊害はないことが明らかになっていますが、糖質制限を厳しくすればするほど動物性脂肪・タンパク質の比重が高くなりがちであることを考えると、やはり無駄な糖質制限は危険です。
それでは、どの程度の糖質制限が適切なのでしょうか?この点に関しては、日本ローカーボ食研究会理事の灰本先生が立派な研究をされています。この研究では、HbA1c<9.0%の患者さんたちには夕食のみの炭水化物制限(1CARD), HbA1c≧9.0%の患者さんたちには朝食と夕食の炭水化物制限(2CARD)を指導しています。1CARDを指導した患者さんたちの平均HbA1cは7.3%, 2CARDを指導した患者さんたちの平均HbA1cは10.6%と大きな差があったにもかかわらず、1年後の平均HbA1cはそれぞれ6.6%, 7.0%とまずまずの値におさまっていました。この結果は、糖尿病の重症度に応じて糖質制限の程度を決めることにより、良好なコントロールを達成できることを示しています。
糖質制限は医師や栄養士の指示に従い、必要最小限の程度にとどめるべきです。民間療法的な極端な糖質制限は避けるべきであると考えています。
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