2014.12.31更新
今年1年、ご愛読ありがとうございました
今年は当院にとっても大きな意義のある一年でした。このブログで不十分ながらもコツコツと発信してきた情報がきっかけとなり、当院の医療に広がりができた一年であったと思います。
当院が行っている、食事療法(糖質制限)を柱として薬をできるだけ減らすという糖尿病治療に注目していただくことができ、4月、6月には週刊文春の、7月には中日新聞の取材を受けました。その記事を見て、現在受けている糖尿病治療に疑問や不安を抱いた患者さんが数多く来院されました。名古屋市以外からの来院も多く、当院の治療方針に共鳴していただける方が多いことに喜びを感じるとともに、責任の重大さを痛感しております。今後も、健康長寿につながるより良い糖尿病治療を目指したいと思います。
また、患者さんと介護者の両方を救う認知症治療(コウノメソッドに基づく認知症治療)が軌道に乗った一年でもありました。アリセプト、リバスタッチパッチ、レミニール、メマリーという4種類の認知症治療薬の適切な使用、米ぬか由来の期待のサプリメント;フェルガードの活用、グルタチオンやニコリンの注射など、いろいろな戦略を駆使して認知症の進行を懸命に抑えた一年であったと言えます。まだ不十分な部分もありますが、多くの患者さんとそのご家族に感謝の言葉をいただきました。これを励みに、来年は一層研鑽を積んで、よりよい認知症医療をご提供します。
来年も今年以上に質の高い医療情報を、このブログを通して発信してゆきますので、ご期待ください。
特に、期待の認知症予防法である芸術療法・回想法についても当院で行うべく準備中ですので、順次情報発信してゆきます。注目していただけるとありがたいです。
皆様、良いお年をお迎えください。
2014.12.30更新
認知症と嗅覚の関係
アルツハイマー型認知症では物忘れよりも嗅覚障害(匂いがわからなくなる)が先行することが知られています。
匂いがわからなくなると、好きだったものでも全く食べなくなってしまうこともあります。
なぜこうなるかというと、嗅覚と記憶には深い関係があるからです。人間の脳の中には「嗅覚野」という匂いを感じ取る部位があり、これが隣接する「嗅内野」という部位を介して記憶をつかさどる「海馬」とつながっています(アルツハイマー型認知症では海馬の萎縮よりも先にこの嗅覚野に変性が起こると考えられています)。匂いを嗅ぐことで嗅覚野が刺激され、その刺激が嗅内野を介して海馬まで届くことによって、記憶がよみがえるのです。
例えば花の匂いを嗅いで、以前に行ったことのあるどこかの場所を思い出すように、匂いが記憶を呼び起こすわけです。匂いを嗅ぐことが脳に良い刺激を与えることになります。
嗅覚障害はあるが記憶は正常である段階では、嗅覚を刺激することがアルツハイマー型認知症の予防につながると考えられています。お香やアロマテラピー、料理の香辛料など、個々の好みに応じていろいろな香り刺激を試してみるとよいでしょう。
2014.12.15更新
糖尿病治療の焦点はインスリン抵抗性・食後高血糖の是正にある!
久山町研究の中心的存在である九州大学医学部の清原 裕教授のお話しを伺う機会に恵まれました。
久山町研究とは、福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約8400人)の住民を対象行われている、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、認知症、癌などの疫学調査のことです。
久山町の住民の年齢・職業分布は全国平均とほぼ同じであり、偏りの少ない平均的な日本人の集団であると考えられます。ですから、ここでの疫学調査は、日本全体の疾病の動向を予測するのに大いに役立ってきたわけです。
1961年に研究が始まった当初は脳卒中に関する調査が中心でしたが、最近では糖尿病や認知症にかかわる調査が盛んに行われているそうです。
清原先生のお話しで最も印象的だったのは、糖尿病の患者さんでは、食後高血糖やインスリン抵抗性が虚血性心疾患や認知症をひき起こすということでした。やはりこれからの糖尿病治療はHbA1cだけを見るのではなく、インスリン抵抗性を改善することにより食後高血糖を是正することが必要だと痛感しました。
やはり糖質制限食、インスリン抵抗性の改善薬が治療の柱となっていくでしょう。
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