院長ブログ

2012.08.12更新

オメガ3系脂肪酸・・・その5

オメガ3脂肪酸については、その有効性を示す医学的なデータが数多くと報告されています。

①EPA摂取量と心疾患・脳血管障害のリスク低下
1977~1980年に千葉県で行われた疫学調査で、漁業地域と農村地域においてEPA摂取量を比較したところ、漁業地域のEPA摂取量は農業地域に比べ1日平均1.7gも多いことがわかりました。両地域における虚血性心疾患および脳血管障害による死亡率を比較すると、男女ともに漁業地域の方が農業地域よりも低い傾向であることが認められました。

②肝がんリスクの低下
1990年から2012年まで、日本国内10か所の市町村で、3年間ずつ行われた多目的コホート研究によると、研究対象の男女9万人の内約400人が肝がんを発症しましたが、そのうち、オメガ3脂肪酸を多く含む魚、EPA,DHAの摂取が多い人は、肝癌罹患率が36%~44%有意に減少することがわかりました。
研究者によると、肝がんの原因はB型,C型肝炎ウィルスの感染から始まる慢性炎症であるため、炎症を抑制するオメガ3脂肪酸が有効であったと推察されています。

③加齢黄斑変性症のリスクの低下
アメリカ人約38000人の女性ヘルスケア専門家を対象にした前向きコホート研究の結果、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いと加齢黄斑変性症リスクが低下することが関連付けられました。
10年にわたる追跡調査で、継続的にEPAを摂取する人ではそうでない人に比べ加齢黄斑変性症のリスクが38%低く、DHAを摂取する人は34%低いことがわかりました。また、魚類を週に2度以上食べる人と月に1回食べる人の加齢黄斑変性症発症率を比較すると、前者の方が42%低くなりました。

2012.08.11更新

オメガ3系脂肪酸・・・その4

α-リノレン酸やEPAなどのオメガ3系脂肪酸には体内で中性脂肪(TG)を下げ、LDL(悪玉)コレステロールを減少させ、動脈硬化の進展を抑える働きが期待されています。米国栄養評議会によると、2009年の米国の死亡原因の第1位が「心疾患」で、年間約60万人が命を落としています。米国内では心疾患予防対策として、オメガ3系脂肪酸の摂取を推奨しています。

前回も紹介しましたが、炎症をはじめとする様々な疾患には、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取バランスの乱れが関わっていると考えられています。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の調査によれば、一般的なアメリカ人の食生活では、オメガ3系脂肪酸に比べてオメガ6系脂肪酸を10倍も摂取しており、明らかにオメガ3系脂肪酸が不足しています。また、新鮮な魚を食べることが一般的な日本と違い、アメリカの多くの家庭では、冷凍のマグロやサーモン、加熱したイワシの缶詰などが食卓に並びます。オメガ3系脂肪酸は酸化や熱によって劣化しやすいので、このようなアメリカ人の食生活では、オメガ3系脂肪酸は不足しやすいと言えるでしょう。

実は、新鮮な魚を豊富に食べることのできる日本においても、脂肪酸摂取のバランスが崩れてきているのです。その原因としては食の欧米化により魚の摂取が減ったことと、肉食や加工食品を摂取する機会が多くなったことにより、オメガ6系脂肪酸の摂取量が急増したことがあげられます。

2012.08.09更新

オメガ3系脂肪酸・・・その3

植物油の中で、α-リノレン酸を多く含んでいるものは多くはありません。比較的身近で手に入れることが可能なものは、えごま油(シソ油)や亜麻仁油などで、高級スーパーや自然食品コーナーなどに置かれています。
また、EPA,DHAはイワシ、サバ、マグロなどの青魚の魚油に多く含まれていることから、これらの魚を意識的に摂取することで補給できます。

【亜麻仁油】
亜麻は中央アジア原産の1年草で、亜麻の種子を亜麻仁、種子から得た油を亜麻仁油と呼びます。ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)は、慢性の便秘、過敏性腸症候群(IBS)、腸炎、憩室炎に対する亜麻仁の使用を承認しています。

【魚油】
EPAとDHAの含有比は、魚の種類によっても異なり、イワシにはEPAが多く、マグロにはDHAが多いとされています。EPAやDHAは海外でも評価されており、心血管疾患の予防作用、中性脂肪低下作用、血圧改善作用、うつ症状の緩和や発症予防などに効果が期待されています。
特にEPAは、動脈の弾力性保持、血小板凝集抑制、血清脂質改善などの作用により、動脈硬化の進展を抑制する医薬品(エパデール)としても利用されています。

2012.08.08更新

オメガ3系脂肪酸・・・その2

脂肪酸は体内でいろいろな生理的反応を起こす活性物質の原料になります。

オメガ6系脂肪酸から作られる活性物質は、免疫反応を激しくするほか、心臓や血管の病気を増やし動脈の壁にプラークを作って血栓を形成しやすくするなど、体内の炎症反応を促進する方向に作用します。。一方、オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸からはEPAが作られ、そこから炎症を抑える活性物質が作られます。

これらの活性物質が作られる過程ではオメガ6系とオメガ3系の両方に共通の酵素が働いています。そのため、普段の食生活で不足しがちなα-リノレン酸やEPAを補うことで、炎症を促進するオメガ6系の活性物質の作られる量が相対的に減り、炎症が抑えられることが期待されます。

オメガ3系脂肪酸のEPAは動脈硬化を抑制する働きがあることが知られています。一方、オメガ6系脂肪酸のアラキドン酸(AA)は炎症を引き起こし、動脈硬化を促進する働きをします。したがって、EPA/AA比は動脈硬化の起こりやすさの指標となります。

2012.08.05更新

オメガ3系脂肪酸・・・その1

脂肪を構成する脂肪酸の中で、体内で作ることができず食物から摂取しなければならないものを必須脂肪酸と言います。その代表がオメガ3系とオメガ6系の脂肪酸です。
オメガ3系脂肪酸には、αリノレン酸、EPA,DHAなどがあり、オメガ6系脂肪酸にはリノール酸、アラキドン酸などがあります。

現代人の食生活では一般的な植物油や動物の脂肪に含まれているオメガ6系脂肪酸は摂取過剰になりがちですが、食の欧米化や魚を食べる機会が減っていることなどから、オメガ3系脂肪酸の摂取が減り、両者のバランスが崩れてしまっています。

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