2014.08.30更新
腸内環境とプロバイオティックス
私たちの腸の中には1000種類以上、100兆個もの細菌が棲んでおり、これは私たちの身体を構成する細胞の数(約60兆個)よりも多いのです。
腸の中の細菌には私たちの体に良い作用をもたらす善玉菌、悪い作用をもたらす悪玉菌、そしてどちらにもなりうる日和見菌などがあります。善玉菌、またはそれらを含む製品、食品をプロバイオティックスと呼びます。
腸内の環境はこれらの菌のバランスによって決まりますが、それには食生活やストレス、薬品、生活スタイル、年齢などが関係してきます。
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、乳酸や酪酸を作り、腸内を酸性にすることで悪玉菌の増殖を抑え、アンモニアなどの腐敗産物の生成を抑制します。また、乳酸や酪酸は腸を刺激して便通をよくする作用も持っています。
最近では善玉菌の免疫調節作用も注目されており、花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患に対する効果も期待されています。
腸内環境は人によって異なるため、自分に合った乳酸菌は簡単には見つかりません。腸内環境を整えるためには、できるだけ多くの種類の乳酸菌を摂取したり、熱や酸に強く頑丈な「有胞子乳酸菌」をサプリメントとして摂取するのがよいでしょう。
2014.08.27更新
認知症高齢者の嚥下障害に対する秘策
肺炎は高齢者の死因の上位を占めていますが、その大部分が誤嚥性肺炎であると考えられています。特にレビー小体型認知症や脳血管性認知症の患者さんでは、嚥下障害から誤嚥性肺炎を起こしやすいことが知られています。また、アルツハイマー型認知症やピック病など、他の認知症でも進行すれば嚥下障害が起きてきます。
認知症の高齢者が入所している施設では、食事中にむせがあると誤嚥性肺炎を恐れるあまり比較的早めに食事を止めてしまい、鼻腔から胃まで栄養チューブを通すか、胃ろうを作ってそこから液状の栄養剤を入れて栄養状態を維持するというパターンになりがちです。しかし、口からものを食べられなくなると、たとえ栄養状態は保たれたとしても、食べる楽しみがなくなり、生活の質は大幅に低下してしまいます。
そこで、たとえ嚥下機能が低下していても、何とかむせずに口から食事ができるような工夫が必要になります。
最近の研究で、高齢者の嚥下機能は、様々な感覚を刺激することで改善されることがわかってきています。辛子の成分であるカプサイシンやミントの成分であるメンソールによる温度感覚刺激、黒コショウの香りによる嗅覚刺激、口腔ケアのブラッシングによる口腔粘膜の知覚刺激などが嚥下機能を改善することが知られています。
このうち、当院ではカプサイシンを嚥下障害の治療に用いています。
カプサイシン入りの口腔内溶解シートが製品化されており、これを毎食直前に舌の上にのせると口腔内で自然に溶解して、食事中~食後のムセが明らかに改善する患者さんが多いです。(私の感覚では8割以上の患者さんに有効です。)
サプリメントの扱いですので、費用は自費となりますが、1か月4000円程度です。
ご家族の嚥下障害でお困りの方は、ぜひご相談ください。
2014.08.25更新
認知症予防にも糖質制限がおススメです!(その2)
最近、70歳代、80歳代という高齢になってから新たに糖尿病を発症する方が増えています。
こうした高齢発症の糖尿病の特徴はやはり食後高血糖です。ただし、若いメタボの患者さんと違って食後のインスリン分泌量は決して多くはありません。加齢により膵臓のインスリン分泌はむしろ低下しているのでしょう。それと同時に糖を最も多量に取り込んでくれる筋肉の量が年齢とともに減っていきます。また、個々の細胞のインスリンに対する反応も悪くなってインスリン抵抗性も増しているのでしょう。
これらの条件が複合して、高齢者の糖尿病が発症します。
高齢の方は「もう歳だから」と肉を避けて「ごはんと野菜の煮物」といったような食事を好みがちです。しかし、このような食事ではどうしても炭水化物(糖質)の摂取量が相対的に多くなり、食後の血糖が上がりやすくなるので、糖尿病になりやすくなります。
70歳代、80歳代は認知症を発症しやすい年代でもあります。昨日のブログでご説明したように、食後高血糖は認知症
のリスクをさらに高めますから、食後の血糖をできるだけ上げないような食生活が重要です。
ですから、70歳以上になったら肉・魚・大豆製品などのタンパク質、脂質を意識的に増やし、糖質を少し減らし気味にするのがよいでしょう。といっても極端に減らす必要はなく、毎食とも主食の量を今までの3分の2に抑える程度で十分です。
また、糖質を摂取する場合には、下の図のGI(gllycemic index)が低い食品を選ぶようにすると、食後の血糖値が上がりにくくなります。
2014.08.24更新
認知症予防にも糖質制限がおススメです!
最近認知症になる人が急増し、社会問題ともなっていますが、食後の血糖値が高いほど認知症になりやすいという研究結果が数多く出されています。
この現象は次のように説明されています。
① 高血糖になると脳内の活性酸素が増えるため、脳の神経細胞が酸化されやすくなる。つまり、脳細胞が「さびやすくなる」ということですね。
② 食後に高血糖となる人では同時ににインスリンが大量に分泌される場合が多いのですが、これを分解するのに多くの「インスリン分解酵素」が消費されます。この「インスリン分解酵素」は実はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の根本的な原因であるアミロイドベータという変性タンパク質を破壊する働きも持っていることが最近わかってきました。運動不足、過食、肥満でインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)がある人では、当然食後に高インスリン血症、高血糖となるので、インスリン分解酵素は多量に分泌されたインスリンを処理するために消費されてしまい、アミロイドベータを破壊するほうにまわらなくなってしまうというわけです。
最近問題となっている若年性アルツハイマー病(40代という若さでで発病する人も増えています)の患者さんにメタボ・肥満の人が多いのもうなずけますね。
食後の高血糖や高インスリン血症を抑えることができる糖質制限は、糖尿病やメタボの治療だけにとどまらず、認知症の予防法としても有効であることがわかっていただけたと思います。
2014.08.17更新
更年期障害や骨粗鬆症に効くスーパーイソフラボン: エクオール
大豆イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをすることが知られています。大豆製品を食べると、大豆に含まれるイソフラボンの一種が腸内細菌の力を借りて「エクオール」に変化します。このエクオールは年齢とともに減ってゆく女性ホルモンの働きを補う作用が非常に強いのです。
エクオールは、女性ホルモンが減ることで起こる不調、たとえばホットフラッシュ(上半身のほてり)や発汗などの更年期症状、骨粗鬆症、メタボや高血圧などの生活習慣病、皮膚のしわ、たるみなどに有効です。
ここで注意しなければいけないことは、大豆製品を食べればエクオールが増えるとは限らないということです。腸内細菌の状態によってエクオールを作ることができる人とできない人がいるからです。エクオールを作る能力のある人の割合は、大豆製品を多く摂取する日本人で50%、摂取量の少ない欧米人では30%程度にしかすぎないことがわかっています。
エクオールを作る能力があるか否かは、名古屋大学発のベンチャー企業: 株式会社ヘルスケアシステムズの「ソイチェック」という尿検査キットで簡単に調べることができます(費用は自費で3800円(税別)です)。この検査でエクオールを作れていると判定された方は、腸内細菌がうまく働いているわけですから、毎日大豆製品を摂取して、エクオールを減らさないようにすることが大切です。
エクオールを作れていないと判定された方は、腸内細菌の活動が不十分であるということになります。エクオールを作ることができる腸内環境づくりのために、大豆製品を毎日摂取すること、食物繊維の摂取量を増やすことが大切です。牛乳を豆乳に替えてみる、白米を雑穀米にしてみる、みそ汁の具に豆腐を加える、納豆を毎日食べるなどの工夫をしてみてはどうでしょうか。
エクオールを作れていない方、作れていてもなかなか大豆製品が摂取できない方には大塚製薬のエクオールのサプリメント「エクエル」をお勧めします。1か月分の費用は自費で4000円(税抜き)ですから、経済的にも比較的手ごろなサプリメントです。副作用はほとんどなく、更年期症状や骨代謝、美肌に対してかなり有効であるというデータが出ています。
エクエルはプラセンタや漢方薬と並んで、更年期以降の女性の強い味方になるでしょう。
ソイチェック、エクエルに興味のある方はお気軽に当院にご相談ください。
2014.08.08更新
認知症=もの忘れではありません!
一般的に認知症イコールもの忘れというイメージが強いようですが、認知症の症状はもの忘れだけではありません。
3大変性系認知症と呼ばれているアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、ピック病ではそれぞれに特徴的な症状が見られます。頻度は45%、23%、8%程度です。.
これら3大認知症の特徴を一言で表すと次のようになります。
アルツハイマー型認知症:数分前のことを思い出せない人
レビー小体型認知症: 夢の世界にいて歩けない人
ピック病: 身勝手で怒りっぽい人
アルツハイマー型認知症は海馬が萎縮してしまって数分前のことも忘れてしまうことが特徴ですから、多くの人が抱くイメージどおりの認知症です。アルツハイマー型認知症の6割は問題行動がなく記憶障害だけの患者さんです。
これと対照的なのがピック病で、もの忘れが軽く行動障害(反社会的行為、スイッチが入ったように怒る、同じ運動を繰り返す、過食など)が主体になります。
レビー小体型知症は声が小さく幻視や妄想があるのが特徴で、パーキンソンン病に似た歩行障害やうつ状態を合併することが多いです。
見方を変えると、エネルギーが有り余っているのがピック病、低下しているのがレビー小体型認知症、その中間がアルツハイマー型認知症ということになります。
このようにそれぞれの認知症の特徴をつかんでおくと、周囲の人の認知症の早期発見、早期治療につながります。
また、認知症のご家族が現在受けている治療が適切なものかどうかを判断する材料にもなります。
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