2012.06.30更新
糖尿病の基礎(その1):血糖値はどのように調節されているか?
今回から数回にわたって、糖尿病の基礎的な知識をおさらいしてみたいと思います。糖尿病に関する理解を深めていただくことにより、皆様の糖尿病治療がより良い物になることを期待しております。
さて、第1回目は血糖の調節のメカニズムについてです。
血液中のブドウ糖(血糖)は、食後は食物中のでんぷんや砂糖などの炭水化物が小腸で消化吸収されることによって、また空腹のときは肝臓に蓄えられたグリコーゲンが分解されることによって供給されます。これが全身の細胞に取り込まれ、重要なエネルギー源となります。
通常、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は血糖を上げるホルモン(グルカゴン、カテコールアミン、コルチゾール、成長ホルモン)と血糖を下げるホルモン(インスリン)とのバランスにより調節されています。このように、血糖値を上げるホルモンはたくさんありますが、下げるホルモンはすい臓から分泌されるインスリンのみなのです。
人類の長い歴史を考えれば、過食よりも飢餓の方がはるかに起こりやすい状況にあったわけで、生き延びるためには血糖を上昇させるシステムを何重にもして万全にしておく必要があったということでしょう。一方、過食に備えて血糖を下げるシステムはあまり活躍の機会がなく、それほど重要ではなかったと推測されます。
ところが、飽食の時代といわれる現代になって、この血糖を下げるシステム、すなわちインスリン分泌のシステムががぜん重要性を増してきたわけです。
食事中の炭水化物(ご飯、パン、麺類、砂糖、イモ類など)は体内で分解されてブドウ糖になります。このブドウ糖を血液中から細胞の中へ取り込む時に必要なのがインスリンなのです。
2012.06.27更新
糖質制限(低炭水化物)食で食欲が落ちる理由
糖質制限(ローカーボ・低炭水化物)食は炭水化物を制限する代わりに脂質、タンパク質の摂取を増やすように指導する食事療法です。
しかし、実際には脂質、タンパク質の絶対量はあまり増えず、結果としてカロリー摂取量も減ることが多いようです。(炭水化物の摂取量が減るので、脂質、タンパク質のカロリー比率(%)は当然上がりますが・・)
この現象は、「脂肪は悪」という先入観も一因であると思いますが、糖質制限を行うと食欲が低下することが主因と考えられています。
なぜ食欲が低下するのでしょうか?これにはいくつかの説がありますが、代表的なものをお示しします。
①糖質制限を始めると、一時的にはタンパク質の摂取量が増える。タンパク質の増加が食欲を低下させるホルモン「レプチン」を介して食欲を低下させるという説。
②インスリンは食欲を亢進させる。糖質制限を行うと血液中のインスリンレベルが下がるので、それまでに比べて食欲が低下するという説。
実際には、糖質制限を始めた当初もタンパク質の摂取量はそれほど増えないので、私は②の説が当たっていると思います。
いずれにせよ、糖質制限食はカロリーを制限しないにもかかわらず、結果として生理的に摂取カロリーが減る場合が多く、メタボや肥満を伴う糖尿病に対しては非常に合理的で自然な治療法であるといえます。
2012.06.25更新
糖質制限(低炭水化物)食にお勧めの食品・・・その4(亜麻仁油)
聞きなれない名前かと思いますが、亜麻仁とは「亜麻」という植物の種子(仁)で、亜麻仁から絞った油が亜麻仁油です。
亜麻仁油にはオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸が多量に含まれています。これは、私たちの体内では作れない「必須不飽和脂肪酸」で、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。
亜麻仁油はLDL(悪玉)コレステロールを低下させ、血糖値を安定させる作用があります。ですから、糖尿病やメタボリック症候群などで糖質制限をしている方にはぴったりの油です。
ただし、亜麻仁油も100℃以上に加熱すると有害なトランス脂肪酸が増えるので、ドレッシングや調味料として用いるのが良いでしょう。
栄養士 阿部明子
2012.06.23更新
糖質制限(低炭水化物)食にお勧めの食品・・・その3(えごま油)
シソ油はシソの実を圧搾してとった油で、シソ特有の香りがあります。同じシソ科の植物であるえごまも古くから油の原料として用いられています。えごま油は風味、成分ともシソ油と同じです。
えごま油(シソ油)はα-リノレン酸を多く含んでいます。α-リノレン酸は体内でEPA・DHAに変換されるため、血中のLDL(悪玉)コレステロールを減らしてHDL(善玉)コレステロールを増やし、脳卒中や狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化による病気を予防します。また、ガンの発生や増殖を抑制します。リノール酸からアラキドン酸が作られて炎症が起こる経路を抑制する作用もあるので、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患の症状を緩和する作用もあります。しかし、酸化されやすいので、加熱調理には向きません。あえ物や味噌汁に入れたり、ドレッシングにしたり、冷奴にかけたりするのが良いでしょう。
糖質制限(低炭水化物)食では、炭水化物を減らすことによる空腹感を補うため脂質の摂取量を増やします。糖尿病の患者さんの血糖を下げるだけであれば、脂質の内容は問わないのですが、ガンや動脈硬化を予防しようとすると、やはり、脂質の質が問題になってきます。多価不飽和脂肪酸、中でもオメガ3脂肪酸を十分に摂ることが最も大切です。今回のえごま油(シソ油)や次回にお話しする予定の亜麻仁油などは植物性のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸をたっぷり含んでいますし、イワシ、アジ、さんま、サバなどの青魚は動物性のオメガ3脂肪酸であるEPA・DHAが豊富です。これらを十分に摂取し、動物性脂肪(肉の脂肪)を摂り過ぎないようにすることで、健康長寿につながる糖質制限食が完成します。
栄養士 阿部明子
2012.06.22更新
糖質制限(低炭水化物)食にお勧めの食品・・・その2(くるみ)
糖質制限(低炭水化物)食を実践されている方に、小腹がすいた時にお勧めなのが、ナッツ類です。
特にくるみは、糖質が少なく良質なタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルが豊富です。ナッツの中では最も多くの多価不飽和脂肪酸を含んでおり、特に植物性のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸の含有量が多いのが特徴です。そのため、くるみはLDL(悪玉)コレステロールを減らし、HDl(善玉)コレステロールを増やして、高血圧や動脈硬化を予防するのに役立ちます。
脂質を多く含むので、意外と腹もちがよいのももう一つの特徴です。
また、肌荒れ防止にも効果があり、中国では昔からくるみを貴族の美容食として重宝していたようです。
栄養士 阿部明子
2012.06.20更新
動脈硬化の検査:CAVI(血圧脈波検査装置)
CAVIは、動脈硬化がどの程度進んでいるかを調べる検査です。
血圧を両腕と両足首で測定するだけの検査ですので、痛みもなく10分程度で終わります。
結果は血管年齢という形で出てくるので、とてもわかりやすいです。
糖尿病・高血圧・脂質異常症などで当院に定期的に通院されている方には、1年に1度検査を受けていただき、動脈硬化の程度の評価や治療効果の判定に役立てています。
動脈硬化が心配な方(とくに高血圧・脂質異常症・糖尿病と診断されている方)は、ぜひ一度検査を受けてみてください。
看護師 石川小由美
2012.06.19更新
私も糖質制限を始めました!・・・第3弾
ローカーボ(糖質制限・低炭水化物)食を始めて数カ月
前にも書いたのですが、最初のころは体重がどんどん減って、気を良くして頑張っていたのですが
最近は蒸し暑さとか自分の気持ちの弱さで体重は横ばい・・時々UPしたり
暑いと仕事終わりの一杯が美味しくて
もちろん糖質ゼロのチューハイを飲んでいますが、私の場合おつまみも食べてしまいます。
湯葉やアボカド、厚揚げとローカーボなものを選んでいるのですが・・・
時々ベビースターのお菓子に手を出してしまいます反省・・
これでは、糖尿病の患者さんに偉そうなことは言えません。
来月は良い結果をお伝えできるように、心を入れ替えて頑張ります
スタッフB
2012.06.18更新
糖尿病、メタボリック症候群、便秘には食物繊維を!
食物繊維は、ブドウ糖の吸収を遅らせ、食後の急速な血糖の上昇やインスリンの上昇を防ぐ働きがあります。また、腸内環境を整えて免疫力の向上や大腸がんの予防に役立ちます。健康を保つために欠かせない成分であるため第六番目の栄養素と言われていますが、近年の日本人には不足しがちです。
糖尿病治療中の方、コレステロールが高い方、ダイエット中の方、高血圧が心配な方、便秘がちの方、便が細い方は食物繊維をサプリメントとして摂取することをお勧めします。
興味のある方はご相談ください。
2012.06.17更新
耳鳴・肩こり・脊柱管狭窄症でお悩みの方へ
当院では頑固な耳鳴りや肩こり、脊柱管狭窄症による腰痛や下肢の痛みに対してプラセンタのツボ注射をお勧めしています。
耳鳴のツボは、大渓(足の内くるぶしの後方)、腎兪(第三腰椎の両側)、風池(耳の後ろ側)、天柱(後頸部のぼんのくぼの両側)など足から頸部まで広い範囲に分布しています。
肩こりのツボは、肩井(頸椎の両側=肩関節と後頭部を結ぶ筋肉の上)、天柱(後頸部のぼんのくぼの両側)、膏肓(背部 胸椎の両側)など頸部から背部にかけて分布しています。手三里(肘関節の数センチ下の親指側)、合谷(親指と人差し指の間)など、腕や手にもツボがあります。
脊柱管狭窄症のツボは、八髎穴(仙腸関節に沿った左右4つずつ、計8か所の仙骨の穴)、腰宜(左右の腸骨稜の突端)、胞膏・秩辺(仙腸関節の外側5cm)、腎兪(第3腰椎の両側)などがあります。
これらのツボに、週1回程度の頻度で1か所につき0.5cc前後のプラセンタを注射します。非常に細い針を使用しますので、注射による痛みは軽微です。
数回で効果が表れる方が多いですが、中には最初は効果がないものの、数カ月たって効果が明らかになってくる方もいて、かなり個人差があるようです。
いずれにせよ、プラセンタのツボ注射はいろいろな治療をしても解決しない耳鳴り、肩こり、脊柱管狭窄症の打開策となりうる治療法です。
2012.06.16更新
生活習慣病の促進因子;トランス脂肪酸に気をつけて!
トランス脂肪酸は、正常な細胞の働きをさまたげ、健康を害すると言われています。具体的には、動脈硬化を促進する、花粉症などのアレルギー症状を悪化させる、認知機能を低下させるなどの報告があります。
マーガリン、ファットスプレッドやショートニングは、常温で液状の不飽和脂肪酸に水素を化学的に結合させて固形化させた合成油脂ですが、これらには、このトランス脂肪酸がたくさん含まれています。
マーガリンやショートニングは市販のパン、クッキー、コーヒー用のクリーム、ファーストフード店の揚げ物など多くの加工食品に使用されています。もしかしたら、知らないうちに口にしてしまっているかもしれません。
現代の日本で普通に生活をしていたら、トランス脂肪酸と無縁でいることは不可能です。少しでも口にしたらすぐに病気になるというわけではありませんが、できるだけ摂取量を少なくしたいものです。
原材料の表示に「マーガリン」、「ショートニング」、あるいは「ファットスプレッド」と書かれたものはなるべく買わないなど、自己防衛策が必要です。
また、トランス脂肪酸の悪影響を少しでも緩和するため、魚油(EPA,DHA)、αリノレン酸などのオメガ3系の油脂を積極的に摂取しましょう。
管理栄養士 小早川宏江
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