2013.05.10更新
花粉症最新情報!
今シーズンは、スギ、ヒノキの花粉の飛散量が昨年の6倍にも達し、花粉症の方にはつらいシーズンでした。花粉の飛散が速く始まった分、終息も早かったようで、4月下旬にはヒノキの飛散はほとんどなくなり、この時期に症状が消失した患者さんも多かったです。
しかし、それもつかの間、GW明けからは、再び症状が悪化して来院される患者さんが増えています。今度は、オオアワガエリ、カモガヤ、ハルガヤなどのイネ科植物の花粉が飛散しているようです。最近は、複数の花粉に反応する患者さんが増えていますので、症状が再発した方は、やはり抗ヒスタミン薬を地道に続ける必要があります。また、長期間症状の続くような方は、以前にお勧めした免疫調整サプリメントであるビタミンDを継続して服用されるのも良いでしょう。
2013.05.07更新
当院の認知症の治療方針・・・コウノメソッドの実践
認知症の治療で最も問題になるのは介護者の疲弊です。介護者が燃え尽きてしまっては、介護・治療を続けることは不可能になります。認知機能の改善のみを重視する従来の治療法では、介護者の負担を軽くすることはできません。そこで、当院では名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生が提唱されているコウノメソッドに従って治療を行っています。
認知症の症状の中で最も介護者を苦しめるのは不眠、易怒、過食、暴力、浪費、介護への抵抗などの陽性症状です。当院では向精神薬や漢方薬(抑肝散など)を駆使して、こうした陽性症状を抑えることにより介護者の負担を軽減することを最優先しています。
その後に、患者さん本人を苦しめている認知機能の低下(もの忘れ)の治療に取り掛かります。治療薬としては様々な種類のお薬を、患者さんの症状に応じてきめ細かく使い分けています。また、フェルガード、エグノリジンS、イチョウ葉エキスなどのサプリメントも必要に応じて使用しています。
このような治療により、介護者のストレスを最小限に抑えつつ、ご本人が人間としての尊厳を失わずに残された人生を送れるようになるのです。
2013.04.30更新
老化は血管から!
4月28日のブログで、過剰に摂取された糖質が筋肉や皮膚、血管などを構成するタンパク質と結合して、老化を促進することをご説明しました。なかでも、酸素を運ぶヘモグロビンと血管は、糖質によってダメージを受けやすいことで知られています。血管を構成しているコラーゲンというタンパク質に余分な糖質が結合して、老化タンパク質;AGEsができます。
このようなダメージによって血管に負担がかかり続けると、血管の内側の細胞に傷がついてしまいます。こうなると、この傷から血液中の悪玉コレステロールが入り込み、「プラーク」というこぶのようなふくらみができます。これが大きくなれば、血管の内径がせまくなり、血液の流れが悪くなります。また、プラークが破裂すれば、突然血管が詰まってしまうこともありうるのです。
このように、血管の老化は直接命にかかわる最も深刻な老化と言えるでしょう。糖尿病の血管合併症も、過剰な糖質によって全身の血管がダメージを受け、「老化」して行くことによるものなのです。
2013.04.28更新
老化を引き起こす蛋白質;AGEs
AGEsについては以前にも当ブログで触れたことがありますが、老化を考える際に非常に重要な物資ですので、もう一度おさらいしたいと思います。
私たちの体は、大部分がタンパク質でできています。老化を防ぎ健康を維持するためには、身体を構成する筋肉、血管、皮膚などのタンパク質を良い状態に保っておくことが大切です。最近、様々な研究が行われた結果、糖質が身体を構成するタンパク質を劣化させ、老化を促進していることがわかってきたのです。
過剰に摂取された糖質はタンパク質と結合してAGEs(蛋白糖化反応最終生成物)という老化物質になります。AGEsはタンパク質を劣化させ、タンパク質が本来の機能を果たせない状態にしてしまいます。AGEsは皮膚や髪の毛などの状態を悪化させて、外見的な老化を引き起こすだけでなく、血管や内臓の働きを低下させ、糖尿病の合併症を進行させます。
ですから、糖尿病の人もそうでない人も、摂取する糖質の質、量を調節することによって、老化のスピードを遅らせ、病気にかかりにくい身体を作ることが可能なのです。
2013.04.28更新
糖尿病など生活習慣病の血液検査の結果を、当日にお伝えできるようになりました!
当院の特徴は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の患者さんが多いことです。
生活習慣病の治療では血糖、HbA1c,脂質、肝機能、腎機能、電解質などの血液検査のデータは非常に重要なのですが、今までは血糖値とHbA1c以外は外注に出していたため、その日のうちに結果がわからず、次回の診察(1~2ヶ月後)の時に初めて患者さんにお知らせするという状態でした。これでは患者さんのモチベーションがなかなか維持できません。
今回、この問題を解決するために写真フィルムで培われたファインケミカル技術を応用して、短時間で測定ができる生化学自動分析装置:ドライケム4000を導入しました。同時に全自動血球計数器:セルタックαも導入しました。脂質、肝機能、腎機能、電解質、炎症反応、貧血検査、白血球数、血小板数などの主要な検査の結果が十数分で出るので、その日のうちに患者さんにお知らせすることができるようになりました。
これによって、当院に通院しておられる生活習慣病の患者さんのコントロールが改善することを期待しております。
2013.04.26更新
急増する糖尿病・・・糖質依存の影響
戦後、わが国で糖尿病が急増している原因として運動量の減少、脂質摂取量の増加などがあげられることが多いようですが、私は精製された糖質(真っ白なごはん・めん・パン・砂糖など)の摂取量の急増も重要な原因であると考えています。
高度に精製された糖質は腸からの吸収が非常に速いので、急激に血糖を上昇させると同時にインスリンの分泌も強く刺激します。そうなると、大量のインスリンが膵臓から分泌され、一度上昇した血糖値が今度は急速に低下することになります。この時、空腹感が強くなるので、血糖値を上げるためにさらに糖質を摂取してしまうという悪循環に陥るわけです。
最近、私の外来に通っておられる高齢者で、糖尿病の家族歴もなく、肥満もない方が70代、80代になって徐々に糖尿病を発症してくるケースが増えています。この方たちの食事調査をしてみると、決して食べ過ぎているわけではなく、摂取カロリーはむしろ少なめなのですが、おかずが少なくごはんやパン中心の献立になっていることが多いのです。
糖質依存から脱却するにはどうしたらよいでしょうか?
糖質制限食はもちろん非常に有効ですが、真っ白なごはんを玄米食に、真っ白なパンやパスタを全粒粉のものに、真っ白な砂糖をより精製度の低い茶色のものに替えるだけでもかなりの効果が期待できます。
是非お試しください!
2013.04.15更新
期待の糖尿病薬 インクレチン関連薬で膵臓に異型細胞が増加!?
インクレチン関連薬は、新世代の画期的な糖尿病薬として期待を集め、ここ数年で多くの患者さんの治療に使われるようになっています。中でも経口薬であるDPP-4阻害薬は、日本での処方量がSU薬、ビグアナイド系薬剤に次いで第3位となっています。
このインクレチン関連薬に関して、最近、衝撃的な論文がDibetes という糖尿病の一流誌に掲載されました。
これによるとインクレチン関連薬を服用していた患者さんの膵臓では内分泌細胞、外分泌細胞ともに増えており、中でも外分泌細胞の中に異型細胞(他の細胞と異なった形態を持つ細胞で、悪性腫瘍となる可能性がある)が見られたとのことです。
DPP-4阻害薬はいったん減少した膵臓のβ細胞を再び増やして、糖尿病の患者さんのインスリン分泌能力を回復させるのではないかという期待がありましたが、今回のデータはこのような細胞を増殖させる能力が裏目に出て、膵臓の細胞を腫瘍化させる可能性があることを示しています。
糖尿病薬は何年にもわたって服用するものなので、いくら良い薬と言われていても長期的には思いがけない副作用が出現する可能性があるのです。
食事、運動などの生活習慣の改善を十分に行ったうえで、それでも血糖がコントロールできない時に、初めて最小限の薬物治療を考えるべきなのです。
2013.03.30更新
糖尿病と認知症(その2)
前回のブログでも触れたように、最近、糖尿病治療中の低血糖発作と認知症の関係が注目されています。
Whitmer らは16667人の2型糖尿病患者さんを対象にして低血糖発作の頻度と認知症の発症との関係を検討しています。
その結果、認知症の発症リスクは入院中に低血糖発作を1回おこすと1.26倍、2回おこすと1.80倍、3回おこすと1.94 倍ととなりました。また、救急外来を受診する必要のある低血糖発作を1回おこすと1.42倍、2回以上おこすと2.36倍となりました。
低血糖発作を1回おこすたびに、認知症のリスクが飛躍的に高まっていることがわかります。ですから、糖尿病の治療では血糖を十分に下げると同時に、低血糖を絶対起こさない配慮が必要なのです。
2013.03.28更新
糖尿病と認知症(その1)
糖尿病の合併症と言えば網膜症・腎症・神経障害の三大合併症がまず頭に浮かぶ方が多いと思いますが、最近は糖尿病患者さんの高齢化に伴って、認知症も重大な合併症の一つとしてとらえなければならなくなってきます。
最近の海外の研究では、糖尿病の患者さんでHbA1cが1%上昇すると認知症のリスクが1.4倍になると報告されています。糖尿病では血糖値が300mg/dlを超えると脳細胞の代謝に異常をきたすことが知られているので、食後血糖がこの値を超えないようにコントロールする必要があります。また、低血糖も認知機能を低下させることも知られています。低血糖を防ぎつつ、食後血糖とHbA1cを下げる必要があるわけです。
そのためには食後血糖が上がりにくい糖質制限(低炭水化物)食に低血糖の危険のないお薬を併用する治療が最も効果的です。
2013.03.23更新
糖尿病学会が糖質制限に関する公式見解を発表!
日本糖尿病学会は3月18日、糖尿病の食事療法、特に炭水化物制限と栄養素摂取比率に関して学会の公式見解を発表しました。
その内容は次の様なものです。
・2型糖尿病の予防と治療において体重の適正化が重要であり、食事療法では総エネルギー摂取量の制限が最優先である。
・炭水化物を極端に制限して減量を図ることは、その効果や、長期的な安全性が証明されていないので、現段階では勧められない。
・三大栄養素のカロリー比率は、炭水化物50~60%、蛋白質20%以下、残りを脂質とする。ただし、患者さんの合併症や嗜好、身体活動量に応じて炭水化物の比率を増減させることを考慮してもよい。
・脂質の摂取比率の上限は25%とする。
予想通り、食事療法ではカロリー制限を最優先し、糖質制限は積極的には勧めないというニュアンスになっていますが、患者さんの状況によって炭水化物の比率を増減させてもよい、とするなどかなり柔軟な姿勢が見られます。(脂質の上限を25%としているあたりは、脂質摂取はせいげんしないという世界的な流れとは逆行しているようにも見えますが・・)
深読みすれば、極端な糖質制限は勧めないが、ゆるやかな制限(炭水化物のカロリー比率40~45%)なら認めてもよいという風にも解釈できます。
いずれにせよ、保守的な日本糖尿病学会が少しずつ糖質制限に対するスタンスを変えつつあることは事実のようです。
当院がお勧めしているゆるやかな糖質制限が糖尿病の食事療法の主流になる日も近いかもしれません。
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