2013.08.03更新
降圧薬をきちんと飲まない人は脳卒中による死亡リスクが6倍に
ヘルシンキ大学のHerttua教授らは、1995年から2007年12月までの国民データベースを利用し、高血圧の患者さん7万3527人の降圧薬処方状況、入院および死亡、降圧薬の服薬状況のデータを解析しました。
その結果、服薬遵守率が80%以下の群では年間の脳卒中による死亡のリスクが、服薬遵守率80% 以上の群に比べて5.68倍、脳卒中による入院のリスクも1.87倍となっていることがわかりました。
高血圧はよほど重症にならない限り自覚症状のない病気ですが、このデータを見ると普段からきちんと降圧薬を服用することがいかに大切かがわかると思います。
高血圧は決して侮れない病気なのです!
2013.07.30更新
ベジタリアン食(菜食)で死亡リスク低下!
アメリカのロマリンダ大学の研究者たちが、カリフォルニア州のある教会に通う7万3000人を超える男女を対象にコホート研究を行い、「ベジタリアン食を摂取した人では非ベジタリアン食を摂取した人と比較して死亡率が低かった。また、男性の方が死亡率低減効果が高かった」という結果をJAMAという医学雑誌に発表しました。
この研究では、2002年~2007年にこの教会に通っていた男女を登録し、食事調査の情報をもとに、非ベジタリアン食群(3万5359人)と4つのベジタリアン食群{ヴィーガン群(完全菜食)5548人, ラクト・オボ群(乳卵菜食)2万1177人, ペスコ群(魚肉菜食)7194人, セミ群(鶏・魚摂取の半菜食)4031人}に分類し、各群における全死亡率を比較しました。
この結果、非ベジタリアン食群の死亡リスクを1.0とすると、ベジタリアン食群全体の死亡リスクは0.88で、12%のリスクの低下が認められました。各ベジタリアン食群の死亡リスクはヴィーガン群(完全菜食):0.85, ラクト・オボ群(乳卵菜食):0.91, ペスコ群(魚肉菜食):0.81, セミ群(鶏・魚摂取の半菜食):0.92 でした。
この結果を見ると、完全な菜食主義でなくても、タンパク源として植物性タンパク質と魚、鶏、乳製品をを中心に摂取する食生活によって、死亡リスクが低下することがわかります。糖尿病、脂質異常症、肥満などの治療目的で糖質制限を行う場合も、この結果が参考になると思います。
2013.07.28更新
糖尿病の発症予防に「座っている時間の短縮」が有効?
イギリスのレスター大学の糖尿病研究グループは、2型糖尿病の危険因子を持っている人では、定期的な運動よりも、日常生活の中で座っている時間を減らし、動き回る生活をするように指導したほうが有効である可能性が高いことをDiabetologiaという医学雑誌に発表しました。
この研究によると、座っている時間が短いほど食後2時間の血糖値・中性脂肪は低下し、HDL-コレステロールは上昇しました。そして、座っている時間は早足のウォーキングやジョギングなどの運動量よりも、これらの値に強く関連していることが明らかになりました。
健診で血糖値が高めと言われた方、あるいは「糖尿病予備軍」、「境界型糖尿病」などと言われている方は、まずはできるだけ「座らない」生活を心がけてみるとよいでしょう。
例えば、電車の座席が空いていても座らない、一家団欒の食事の後は率先して食卓を片づけるなど、日常生活のちょっとした工夫で糖尿病の発症が防げるかもしれないのです。
2013.07.21更新
コウノメソッドによる認知症治療の勉強会に参加しました。
7月20日に、名古屋市内のホテルで、コウノメソッドによる認知症治療の勉強会が開催されました。
この会には、コウノメソッドを実践している100名以上の医師が全国から集まりました。また、それ以外の医師、看護師の参加者も多く、会場はあっという間に満席となりました。認知症治療に悩んでいる医療関係者が如何に多いかを実感しました。
そして、このメソッドを考案された名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生が、実践的な認知症治療のノウハウを3時間にわたって明快に講義されました。30年もの間、認知症治療一筋に歩んでこられた先生が確立された「患者さんとその家族を幸せにするための認知症治療」のエッセンスが詰まった感動的な名講義でした。
当院の外来でも認知症の患者さんは急速に増えており、最近はさらに加速してきた感があります。一方で、認知症の治療法はなかなか有効なものがなく、このままでいくと認知症の老人をかかえて途方に暮れてしまう家族が急増するのではないかという危機感を感じています。当院ではすでにコウノメソッドを導入して治療を行っていますが、河野先生の講義を聴いて「明日からの認知症診療をさらにレベルアップしなければ」という思いを胸に帰途につきました。
2013.07.18更新
プラセンタとダイエット
プラセンタは血行を促進し、新陳代謝や細胞の働きを活性化し、老廃物の排出を促進するのでダイエット効果の出やすい体質をつくってくれます。
プラセンタのみで短期間での大きなダイエット効果は期待できませんが、プラセンタの注射や内服により脂肪の燃焼を促進させることができます。
もちろん、前提としてバランスのとれた食生活、適度な運動は必須です。
2013.07.17更新
フェルガードが糖尿病の血糖コントロールと神経障害を改善!
今年5月の日本糖尿病学会で、フェルラ酸を主成分とするフェルガードの糖尿病に対する効果が、東京慈恵会医科大学糖尿病内科の研究グループから発表されました。その結果をまとめると次のようになります。
フェルラ酸200mg/dayを57人の男性2型糖尿病患者に3ヶ月間服用してもらったところ・・
・HbA1cは7.54→7.11まで改善。
・糖尿病性神経障害の指標であるEDや痛みのスケールも有意に改善
・QOL(生活の質)評価スコアも有意に改善
試験に参加した患者さんの数は少ないものの、非常に期待の持てる結果が得られたようです。
糖尿病の方は認知症になる確率が一般の方よりも2倍前後高いことがわかっています。40代、50代からフェルガードを服用することにより、糖尿病のコントロールの改善と認知症予防の両方が期待できます。
興味のある方は、是非ご相談下さい。
2013.07.08更新
糖尿病患者さんの死因:虚血性心疾患が増加傾向!
2007~2009年に登録された6000例以上の日本人糖尿病患者を追跡した大規模研究JDCP(Japan Diabetes Complication and its Prevention Prospective)studyの3年目までの中間解析結果が、今年5月に熊本市で開催された日本糖尿病学会で報告されました。
糖尿病患者の心血管合併症を虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中(脳梗塞、脳出血、一過性脳虚血発作)、下肢血管疾患(閉塞性動脈硬化症)に分けて、3疾患の割合を見ると、1年目、2年目、3年目ともほぼ6:3:1の割合になっていました。
1988年~1993年の久山町研究のデータでは、虚血性心疾患よりも脳卒中のほうが多かったのですが、JDCPで追跡した2010年代の現状は、心臓が6割、頭が3割、足が1割となり、この20年間で糖尿病患者の合併症として虚血性心疾患が急増していることがわかります。
追跡3年目までに認められた死亡例(56例)の死因は、1位が癌で28.6%、2位が虚血性心疾患で16.1でした。ただし、12.5%で認められた突然死を虚血性心疾患に含めると、癌と同率の28.6%となりました。このデータから、今後は欧米と同様に、日本人の糖尿病においても、死因として癌よりも虚血性心疾患が上に来る可能性が出てきました。
このように、糖尿病の大血管合併症として虚血性心疾患がますます重要になってくることが予想されます。糖質制限食で糖尿病治療を行う場合にも、虚血性心疾患の予防のために、摂取する脂質・タンパク質の内容を十分に吟味する必要があるでしょう。
2013.07.07更新
赤肉に含まれるカルニチンが動脈硬化を促進する?
「赤肉に含まれる栄養素のL-カルニチンは腸内細菌叢の代謝を受けてアテローム性動脈硬化を促進する」という論文が米国のクリーブランドクリニックの研究グループから発表され、注目を集めています。
赤肉(牛、豚、羊などの肉)にはカルニチンが豊富に含まれています。カルニチンは、腸内細菌の働きでトリメチルアミン(TMA)に変換されます。TMAがアテローム性動脈硬化を促進することは以前からわかっています。
一般に肉食では飽和脂肪酸・コレステロールが心血管病リスクの元凶とされてきましたが、最近の研究ではこれを支持するデータ、支持しないデータが混在しており、飽和脂肪酸・コレステロールだけでは肉食による心血管病リスクを完全には説明しきれないという考え方が主流になっています。そこに発表された「赤肉に含まれるカルニチンが一因」とするこの論文は衝撃的でした。
この論文は全米で「カルニチン論争」が巻き起こすきっかけともなりました。というのも、アメリカではカルニチンは多くの循環器医により推奨されるサプリメントであり、ベストセラー「Metabolic Cardiology」でも推奨されているからです。精肉業界も巻き込んで大変な論争になっており、どのような結論が出るのかが気になるところです。
2013.06.30更新
通年性アレルギーの原因は?
花粉症は2月から3月のスギ花粉症、3月から4月のヒノキ花粉症など、人によって悪化する季節がはっきりしていますが、最近は1年中鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、くしゃみ、咳、皮膚の発疹やかゆみなどのアレルギー症状を訴える方が増えています。この場合はハウスダストが原因であることが多いのです。
ハウスダストとは、屋内に発生する様々なアレルゲンの混合物であり、主なものはダニ、猫や犬などのフケ、ガやゴキブリなどの昆虫の死骸や糞、コウジカビなどの真菌が含まれることが知られています。
通年性のアレルギー症状に悩んでおられる方は、まずアレルゲン検査(採血で簡単にできます。自己負担は3割負担の方で5000円程度です。)を受け、原因となっているアレルゲンを明らかにすることが大切です。例えば、ダニが原因であることがわかれば、滞在時間の長い寝室をより念入りに掃除するべきですし、ガが原因の場合にはクローゼットや台所回りを意識して掃除する必要があります。
このように、原因のアレルゲンをはっきりさせることで、より具体的な対策が立てられるようになり、生活の質の向上につながります。
2013.06.29更新
米国糖尿病学会がインクレチン関連薬に関する声明を発表!
「米国糖尿病学会(ADA)は6月10日、血糖降下薬として用いられているインクレチン関連薬の開発または販売を行う全ての製薬会社に対して、各社のインクレチン製剤に関する患者レベルのデータを、独立レビューのために提供し、「インクレチン製剤が膵炎や膵癌の発生に寄与しているか否か」という疑問の解決を促進するように要請した。
インクレチン関連薬は、GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬などの血糖降下薬などであり、単剤または他の治療薬との併用により、糖尿病コントロールを改善し、体重の減少を促進する。最近の公表文献により、2型糖尿病患者における膵炎や膵癌の発生に対する、インクレチン関連薬の寄与の可能性に関して、活発な議論が行われるようになってきている。
患者が、医師に相談した上で、治療法に関して可能な限り至適な意思決定を行えるようにするためには、治療法に関して判明しているリスクとメリットを、患者に全て知らせる必要がある。
行政データベースの登録データの解析では、インクレチン関連薬の投与が、膵炎に関連しないこと、またはわずかに関連することが示唆されていたが、肥満や飲酒との関連性よりは弱いものである。また、剖検組織標本を用いた最近のケースコントロール試験では、インクレチン関連薬の投与を受けた2型糖尿病患者における膵臓の腫瘍性変化の発生率が、糖尿病を有さない被験者群、またはインクレチン関連薬以外の治療薬の投与を受ける糖尿病患者群よりも、高くなっていたことが示唆された。ただし、この解析には方法上の問題点も存在していた。」 (m3.com 米国学会短信 2013.6.18.より)
記事の中に出てくる「剖検組織標本を用いた最近のケースコントロール試験」とは、今年の4月15日のブログでご紹介したDiabetesという糖尿病の一流誌に掲載された論文のことです。この論文をきっかけとして、インクレチン関連薬と膵癌・膵炎との関連に関する議論が活発化しているというわけです。こうした流れをアメリカ糖尿病学会も無視できなくなったということでしょう。
今後、SU剤や長時間作用型インスリンと同様に「関連性あり」との結論が出る可能性もあるわけですから、現状ではDPP-4阻害薬の安易な使用は避けたいところです。
糖尿病治療は、あくまでも食事療法、運動療法を中心にして、必要最低限の薬物療法を併用するという姿勢が大切です!
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