院長ブログ

2012.09.23更新

糖質制限(低炭水化物)食におけるタンパク質・炭水化物の質の重要性

今年6月にまたしても安易な糖質制限(低炭水化物)食に警鐘を鳴らす論文が発表されました。
これは30歳から49歳のスウェーデン人女性43396人の食事内容と心血管病(心臓病、脳卒中など)の発生の有無を15年間にわたって追跡するという壮大な研究です。
この結果、やはり糖質制限を厳しくすればするほど心血管病の発生やそれによる死亡が増えることがわかりました。その傾向は特に動物性のタンパク質を中心に摂取した人に顕著であったということです。
これは以前にご紹介したハーバード大学のFung博士らの研究結果と一致するものです。
そして、この論文では結論として、糖質制限を行う時には炭水化物の質(精製されたものを避け、全粒粉のパンやパスタ、玄米など精製度の低い物を用いる)やタンパク質の質(動物性のものを減らし植物性のものを増やす)にこだわらないと、心血管病のリスクが増すことになると注意を促しています。

糖質制限を実践されている方はこのことを肝に銘じていただきたいと思います。

2012.09.12更新

糖質制限で血糖コントロールが良くなる本当の理由

最近、糖尿病の新しい食事療法として糖質制限(低炭水化物)食が注目を集めており、週刊誌やテレビ番組で取り上げられることも多くなりました。
糖質制限に関する書籍もたくさん出版されています。その多くが、糖質摂取量を1日130g以下に抑えるというような厳しい制限を勧めています。「糖質を摂取すると血糖値が上がるので摂取しなければ良い。」といった短絡的な論調も目立ちます。しかし、これは糖質制限食で長期的に血糖コントロールが改善するメカニズムとは別物です。

では、なぜ糖質制限で血糖コントロールが良くなるのでしょうか?

私の経験では、糖質制限を行うと多くの場合インスリン分泌が改善します。これは、糖質制限により膵臓に対するインスリン分泌刺激が少なくなり、疲弊しかかった膵臓を休息させることができるためと考えられます。
また、糖質制限でインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)も改善します。
夕食のみ炭水化物を抜く程度のマイルドな糖質制限(低炭水化物)食でも、数か月以上続けると徐々に血糖コントロールが改善し、HbA1cが下がってくるのはこうした理由によると考えています。マイルドな糖質制限を続けていると、糖質をある程度摂取しても食後血糖が上がりにくくなるのです。また、重症の糖尿病で当初は3食とも糖質を抜く厳しい制限で治療を始めた場合でも、しだいに2食制限→1食制限と制限を緩めることができる場合が多いのです。これも糖質制限によるインスリン分泌とインスリン抵抗性の改善によると考えています。

私がマイルドな糖質制限をお勧めするのにはこのような背景があります。血液中にケトン体が増えるような厳しい糖質制限は、確かに素早く血糖を下げる効果はありますが、長期的に見た安全性に疑問が残ります。以前のブログでもお話ししたように、厳しい糖質制限によって脂質が動物性脂肪に偏り過ぎたり、赤肉の摂取量が増えすぎることにより、心血管死やガンによる死亡が増える可能性があります。また、厳しい糖質制限によって増加した血液中のケトン体が有害な作用を起こす可能性も否定はできないのです。

2012.09.02更新

ナイアシン(ビタミンB3)

ナイアシンはビタミンB群のひとつで、ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称です。体内でエネルギー産生やアミノ酸、脂質代謝にかかわる補酵素として重要な働きをになっている栄養素です。また、遺伝子やホルモンの合成、細胞の分化にもかかわるほか、血管拡張作用を持ち、血液の循環を良くする働きも持つ重要なビタミンです。
ナイアシンが不足すると皮膚の水疱・角化・乾燥、口角炎、口内炎、食欲不振、不眠症、神経症など多彩な症状が出現します。
ナイアシンは主に肉、魚、とくに刺身に多く含まれています。牛乳や緑黄色野菜、豆類、穀物などにも含まれています。日本人が主食とする精白米は玄米の1/13しかナイアシンを含んでいないので、主食の摂り方にも注意が必要です。

ナイアシン欠乏による上記の症状の改善以外にも、ナイアシンを積極的に摂取することで、症状の改善が認められた例が以前から多数報告されています。うつ病や統合失調症が改善したという報告が多く、また、変形性膝関節症の痛みが軽減したという報告もみられます。

ナイアシンは当院でご紹介しているマルチビタミン&ミネラルの中に含まれているほか、ナイアシンのみのサプリメントもあります。興味のある方はご相談ください。

2012.09.01更新

コエンザイムQ10(CoQ10)

コエンザイムQ10は体内のあらゆる細胞に存在する生命活動に必須の補酵素です。主に肉類や魚介類などの食品に含まれる使用性のビタミン様物質です。20台をピークに体内での産生量は大幅に減少すると言われており、健康な生活を送るためには食材からの摂取やサプリメントによる補給を心がける必要があります。
コエンザイムQ10が不足すると、細胞内でのエネルギー産生が不十分となり、だるい、疲れやすい、食欲がない、冷え性、風邪をひきやすいなどの症状が出てきます。
コレステロールを下げるためにスタチンと呼ばれる系統の薬を服用すると、体内のコエンザイムQ10濃度が下がってしまうことが知られています。
スタチンはコレステロールの合成を阻害する働きを持っていますが、コエンザイムQ10の合成は途中までコレステロールの合成と同じ経路をたどるため、コエンザイムQ10の合成も同時に阻害してしまうのです。
スタチンを服用するときは、同時にコエンザイムQ10を含むサプリメントを摂取するとよいでしょう。

2012.08.12更新

オメガ3系脂肪酸・・・その5

オメガ3脂肪酸については、その有効性を示す医学的なデータが数多くと報告されています。

①EPA摂取量と心疾患・脳血管障害のリスク低下
1977~1980年に千葉県で行われた疫学調査で、漁業地域と農村地域においてEPA摂取量を比較したところ、漁業地域のEPA摂取量は農業地域に比べ1日平均1.7gも多いことがわかりました。両地域における虚血性心疾患および脳血管障害による死亡率を比較すると、男女ともに漁業地域の方が農業地域よりも低い傾向であることが認められました。

②肝がんリスクの低下
1990年から2012年まで、日本国内10か所の市町村で、3年間ずつ行われた多目的コホート研究によると、研究対象の男女9万人の内約400人が肝がんを発症しましたが、そのうち、オメガ3脂肪酸を多く含む魚、EPA,DHAの摂取が多い人は、肝癌罹患率が36%~44%有意に減少することがわかりました。
研究者によると、肝がんの原因はB型,C型肝炎ウィルスの感染から始まる慢性炎症であるため、炎症を抑制するオメガ3脂肪酸が有効であったと推察されています。

③加齢黄斑変性症のリスクの低下
アメリカ人約38000人の女性ヘルスケア専門家を対象にした前向きコホート研究の結果、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いと加齢黄斑変性症リスクが低下することが関連付けられました。
10年にわたる追跡調査で、継続的にEPAを摂取する人ではそうでない人に比べ加齢黄斑変性症のリスクが38%低く、DHAを摂取する人は34%低いことがわかりました。また、魚類を週に2度以上食べる人と月に1回食べる人の加齢黄斑変性症発症率を比較すると、前者の方が42%低くなりました。

2012.08.11更新

オメガ3系脂肪酸・・・その4

α-リノレン酸やEPAなどのオメガ3系脂肪酸には体内で中性脂肪(TG)を下げ、LDL(悪玉)コレステロールを減少させ、動脈硬化の進展を抑える働きが期待されています。米国栄養評議会によると、2009年の米国の死亡原因の第1位が「心疾患」で、年間約60万人が命を落としています。米国内では心疾患予防対策として、オメガ3系脂肪酸の摂取を推奨しています。

前回も紹介しましたが、炎症をはじめとする様々な疾患には、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸の摂取バランスの乱れが関わっていると考えられています。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の調査によれば、一般的なアメリカ人の食生活では、オメガ3系脂肪酸に比べてオメガ6系脂肪酸を10倍も摂取しており、明らかにオメガ3系脂肪酸が不足しています。また、新鮮な魚を食べることが一般的な日本と違い、アメリカの多くの家庭では、冷凍のマグロやサーモン、加熱したイワシの缶詰などが食卓に並びます。オメガ3系脂肪酸は酸化や熱によって劣化しやすいので、このようなアメリカ人の食生活では、オメガ3系脂肪酸は不足しやすいと言えるでしょう。

実は、新鮮な魚を豊富に食べることのできる日本においても、脂肪酸摂取のバランスが崩れてきているのです。その原因としては食の欧米化により魚の摂取が減ったことと、肉食や加工食品を摂取する機会が多くなったことにより、オメガ6系脂肪酸の摂取量が急増したことがあげられます。

2012.08.09更新

オメガ3系脂肪酸・・・その3

植物油の中で、α-リノレン酸を多く含んでいるものは多くはありません。比較的身近で手に入れることが可能なものは、えごま油(シソ油)や亜麻仁油などで、高級スーパーや自然食品コーナーなどに置かれています。
また、EPA,DHAはイワシ、サバ、マグロなどの青魚の魚油に多く含まれていることから、これらの魚を意識的に摂取することで補給できます。

【亜麻仁油】
亜麻は中央アジア原産の1年草で、亜麻の種子を亜麻仁、種子から得た油を亜麻仁油と呼びます。ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)は、慢性の便秘、過敏性腸症候群(IBS)、腸炎、憩室炎に対する亜麻仁の使用を承認しています。

【魚油】
EPAとDHAの含有比は、魚の種類によっても異なり、イワシにはEPAが多く、マグロにはDHAが多いとされています。EPAやDHAは海外でも評価されており、心血管疾患の予防作用、中性脂肪低下作用、血圧改善作用、うつ症状の緩和や発症予防などに効果が期待されています。
特にEPAは、動脈の弾力性保持、血小板凝集抑制、血清脂質改善などの作用により、動脈硬化の進展を抑制する医薬品(エパデール)としても利用されています。

2012.08.08更新

オメガ3系脂肪酸・・・その2

脂肪酸は体内でいろいろな生理的反応を起こす活性物質の原料になります。

オメガ6系脂肪酸から作られる活性物質は、免疫反応を激しくするほか、心臓や血管の病気を増やし動脈の壁にプラークを作って血栓を形成しやすくするなど、体内の炎症反応を促進する方向に作用します。。一方、オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸からはEPAが作られ、そこから炎症を抑える活性物質が作られます。

これらの活性物質が作られる過程ではオメガ6系とオメガ3系の両方に共通の酵素が働いています。そのため、普段の食生活で不足しがちなα-リノレン酸やEPAを補うことで、炎症を促進するオメガ6系の活性物質の作られる量が相対的に減り、炎症が抑えられることが期待されます。

オメガ3系脂肪酸のEPAは動脈硬化を抑制する働きがあることが知られています。一方、オメガ6系脂肪酸のアラキドン酸(AA)は炎症を引き起こし、動脈硬化を促進する働きをします。したがって、EPA/AA比は動脈硬化の起こりやすさの指標となります。

2012.08.05更新

オメガ3系脂肪酸・・・その1

脂肪を構成する脂肪酸の中で、体内で作ることができず食物から摂取しなければならないものを必須脂肪酸と言います。その代表がオメガ3系とオメガ6系の脂肪酸です。
オメガ3系脂肪酸には、αリノレン酸、EPA,DHAなどがあり、オメガ6系脂肪酸にはリノール酸、アラキドン酸などがあります。

現代人の食生活では一般的な植物油や動物の脂肪に含まれているオメガ6系脂肪酸は摂取過剰になりがちですが、食の欧米化や魚を食べる機会が減っていることなどから、オメガ3系脂肪酸の摂取が減り、両者のバランスが崩れてしまっています。

2012.07.30更新

EDはなぜ起こる?・・・その2

最近、EDの原因としてLOH症候群あるいは男性更年期障害が注目されています。
40代から50代にかけて男性ホルモン(テストステロン)が急激に減少するため、女性の更年期障害に似た不快な諸症状に加えてEDが起こってきます。この場合もED治療薬のみでなく、テストステロンの補充療法や、その材料となるDHEAの投与が必要いなります。

うつ病がEDの原因になることも多いです。この場合も、ED治療薬と並行して抗うつ薬の投与が必要です。

また、特に基礎疾患がなく、精神的なストレスだけでEDになることもあります。
仕事や夫婦関係など日常生活におけるストレスが原因になることもあれば、性交がたまたまうまくいかなかったことによるトラウマが原因となることもあります。
このタイプでは、「また失敗するのではないか」という不安がさらにEDを悪化させるという悪循環に陥ることも多いようです。このような場合には、まずはPDE5阻害剤で自信を回復していただくことが重要です。認知行動療法などの心理療法が有効な場合もあります。

このように、EDはいろいろな原因が複雑に組み合わさって起こっています。当院は内科、糖尿病内科、腎臓内科、心療内科を標榜するクリニックですので、単にED治療薬を処方するだけでなく、症状の背後にある生活習慣病、男性更年期障害(LOH症候群)
や精神的ストレスのケアも可能です。

1人で悩まず、気軽にご相談ください。

EDを克服し、男性としての自信を取り戻し、生活の質(QOL)を高めましょう!

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