院長ブログ

2012.07.13更新

認知症の予防(その4):認知症と食生活

認知症には生活習慣病の側面もあります。したがって、認知症の予防には食生活が大切です。

魚の摂取は認知症のリスクを低下させると報告されています。
青魚に含まれるオメガ3脂肪酸であるDHAはアルツハイマー型認知症を予防するとの報告があります。

肉に多く含まれるオメガ6脂肪酸であるアラキドン酸は記憶機能を改善するという報告もあります。

野菜の葉酸やビタミンB群には血中ホモシステインを低下させてアルツハイマー型認知症や脳血管性
認知症のリスクを低下させるという報告があります。

緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンや、コーヒーに含まれるカフェインもアルツハイマー
型認知症を予防することが知られています。

九州大学の久山町研究では、BMI30以上の肥満の人は認知症になるリスクが2倍高いことが示されました。
中年期に肥満を予防・是正しておくことが認知症の予防につながると言えるでしょう。

2012.07.11更新

認知症の予防(その3):認知症と運動

運動のアルツハイマー型認知症・脳血管性認知症に対する予防効果は多くの疫学研究で明らかにされています。
中年期から、少し汗をかく程度の有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギングなど)を週2回以上、30分程度行うことで高齢者となってからのアルツハイマー型認知症の発症リスクが1/3に減少するという報告があります。

また、人を対象とする介入研究で、有酸素運動による海馬(新しい記憶の形成をつかさどる部分)の体積の増加と記憶力向上の効果が示されています。

認知症予防のためには、中年期からウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を継続して行うのが良いでしょう。
これは、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防・治療にもつながるので、一石二鳥の方法といえます。

2012.07.09更新

認知症の予防(その2):認知症と高血圧

高血圧症は脳血管障害を起こしやすくするので、それを介して脳血管性認知症のリスクを高めます。

九州大学の久山町研究では、32年間の追跡の結果、中年期に高血圧であった人では、老年期の血圧にかかわらず、脳血管性認知症を発症するリスクが約5倍高いという結果が出ており、中年期の血圧管理の重要性が示されました。

アルツハイマー型認知症に関しても、脳梗塞などの虚血性病変の合併は発症を早めることが知られており、高血圧症はアルツハイマー型認知症のリスクを高めると考えられます。

このように血圧のコントロールは、認知症の予防につながると言えます。中でも、ARB(angiotensin Ⅱ receptor blocker)という種類の降圧薬は、血圧をコントロールすると同時に、認知機能の低下を抑制する作用を持つことが知られています。

2012.07.08更新

認知症の予防(その1):認知症と糖尿病

認知症は長生きすればするほど発症するリスクが高まるので、発症を防ぐことは不可能です。実際、95歳以上では過半数が認知症です。しかし、生活習慣を変えることで、認知症の発症時期を遅らせることは可能です。認知症には生活習慣病の側面もあるわけです。

今日は、認知症と糖尿病の関係についてご説明します。
九州大学の久山町研究によれば、糖尿病の人はそうでない人に比べて認知症になる危険性が1.74倍高いことがわかっています。認知症の中でも脳血管障害が原因となる血管性認知症になる危険性は1.82倍、脳にアミロイド蛋白が蓄積して脳の神経細胞に変性が起こるアルツハイマー型認知症になる危険性は2.05倍高くなることもわかりました。
糖尿病は、細小血管障害や動脈硬化を引き起こして、脳血管障害を悪化させる一方、神経細胞のタンパク質を糖化させて(2012年5月26日のブログ参照)、神経細胞の機能を障害している可能性があります。
また、糖尿病で高インスリン血症があると、脳に沈着したアミロイド蛋白が分解されにくくなり、アルツハイマー型認知症の発症につながると考えられています。

認知症の予防には糖尿病の適切なコントロールが重要であることがわかっていただけたと思います。

2012.07.02更新

糖尿病の基礎(その3):糖化現象と血糖コントロールの指標

人間の体を構成しているタンパク質とブドウ糖が結合する現象を糖化と呼んでいます。
血糖値が高くなると、糖化されるタンパク質も増加します。糖化現象により、それぞれのタンパク質の正常な機能が失われ、これが糖尿病の合併症や老化につながると考えられています。

どれぐらい糖化が進んでいるかは、次のような糖化タンパクを測定することで推測することができます。これらは血糖コントロールの指標となるだけでなく、合併症の危険性を評価するという意味でも重要です。

①HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
赤血球の中にあって、酸素を運ぶ役割を持つ色素がヘモグロビンです。このヘモグロビンが糖化したものがHbA1cです。
赤血球の寿命と関係するため、過去2ヶ月間の血糖の平均値を反映します。赤血球の寿命が短くなる一部の貧血などでは、実際よりも低い値となることがあります。

②GA(グリコアルブミン)
血液中のタンパク質の半分以上を占めるのがアルブミンで、糖化したアルブミンをグリコアルブミンと言います。
過去2週間程度の血糖の平均値を反映するので、治療開始初期や治療を変更したときには、HbA1cよりも有用な指標となります。

2012.07.01更新

糖尿病の基礎(その2):高インスリン血症とは

インスリンは両刃の剣です。炭水化物を大量に食べても、すい臓からそれに見合った多量のインスリンが分泌され血糖が上がり過ぎるのを防いで、生体の恒常性を保ちます。
しかし、一方でインスリンの分泌が過剰な状態が続き、血液中のインスリン濃度が高くなる(高インスリン血症)と、肝臓での中性脂肪の合成が活発になって血液中の中性脂肪が増え、腎臓の尿細管でのナトリウムの再吸収が増えてナトリウムが体内に貯留するために高血圧となり、また、血管の内皮細胞が増殖することによって動脈硬化が進みます。

また、厚生労働省研究班の大規模研究で、高インスリン血症のある人は、そうでない人に比べて最大3.2倍、大腸癌にかかりやすいという結果が出ています。血液中のインスリン濃度が高すぎる状態が続くと、細胞増殖を促進するIGF-1(インスリン様成長因子1)の働きが活発になり、大腸癌が発生するリスクが高くなると考えられています。 

さらに、同じ研究班のもう一つの大規模研究によれば、糖尿病にかかったことのある人が何らかのガンにかかる確率は、そうでない人に比べて男性で1.27倍、女性で1.21倍であるという結果が出ています。肥満や運動不足のある糖尿病ではインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)があり、それを補うために高インスリン血漿が生じ、これが、腫瘍細胞の増殖を刺激してガンの発生に関与すると考えられています

高インスリン血症は、ガン、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の原因となり、老化を促進する因子であると言えるでしょう。

2012.06.30更新

糖尿病の基礎(その1):血糖値はどのように調節されているか?

今回から数回にわたって、糖尿病の基礎的な知識をおさらいしてみたいと思います。糖尿病に関する理解を深めていただくことにより、皆様の糖尿病治療がより良い物になることを期待しております。

さて、第1回目は血糖の調節のメカニズムについてです。

血液中のブドウ糖(血糖)は、食後は食物中のでんぷんや砂糖などの炭水化物が小腸で消化吸収されることによって、また空腹のときは肝臓に蓄えられたグリコーゲンが分解されることによって供給されます。これが全身の細胞に取り込まれ、重要なエネルギー源となります。
通常、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は血糖を上げるホルモン(グルカゴン、カテコールアミン、コルチゾール、成長ホルモン)と血糖を下げるホルモン(インスリン)とのバランスにより調節されています。このように、血糖値を上げるホルモンはたくさんありますが、下げるホルモンはすい臓から分泌されるインスリンのみなのです。

人類の長い歴史を考えれば、過食よりも飢餓の方がはるかに起こりやすい状況にあったわけで、生き延びるためには血糖を上昇させるシステムを何重にもして万全にしておく必要があったということでしょう。一方、過食に備えて血糖を下げるシステムはあまり活躍の機会がなく、それほど重要ではなかったと推測されます。

ところが、飽食の時代といわれる現代になって、この血糖を下げるシステム、すなわちインスリン分泌のシステムががぜん重要性を増してきたわけです。

食事中の炭水化物(ご飯、パン、麺類、砂糖、イモ類など)は体内で分解されてブドウ糖になります。このブドウ糖を血液中から細胞の中へ取り込む時に必要なのがインスリンなのです。

2012.06.27更新

糖質制限(低炭水化物)食で食欲が落ちる理由

糖質制限(ローカーボ・低炭水化物)食は炭水化物を制限する代わりに脂質、タンパク質の摂取を増やすように指導する食事療法です。
しかし、実際には脂質、タンパク質の絶対量はあまり増えず、結果としてカロリー摂取量も減ることが多いようです。(炭水化物の摂取量が減るので、脂質、タンパク質のカロリー比率(%)は当然上がりますが・・)

この現象は、「脂肪は悪」という先入観も一因であると思いますが、糖質制限を行うと食欲が低下することが主因と考えられています。
なぜ食欲が低下するのでしょうか?これにはいくつかの説がありますが、代表的なものをお示しします。

①糖質制限を始めると、一時的にはタンパク質の摂取量が増える。タンパク質の増加が食欲を低下させるホルモン「レプチン」を介して食欲を低下させるという説。
②インスリンは食欲を亢進させる。糖質制限を行うと血液中のインスリンレベルが下がるので、それまでに比べて食欲が低下するという説。

実際には、糖質制限を始めた当初もタンパク質の摂取量はそれほど増えないので、私は②の説が当たっていると思います。
いずれにせよ、糖質制限食はカロリーを制限しないにもかかわらず、結果として生理的に摂取カロリーが減る場合が多く、メタボや肥満を伴う糖尿病に対しては非常に合理的で自然な治療法であるといえます。

2012.06.18更新

糖尿病、メタボリック症候群、便秘には食物繊維を!

食物繊維は、ブドウ糖の吸収を遅らせ、食後の急速な血糖の上昇やインスリンの上昇を防ぐ働きがあります。また、腸内環境を整えて免疫力の向上や大腸がんの予防に役立ちます。健康を保つために欠かせない成分であるため第六番目の栄養素と言われていますが、近年の日本人には不足しがちです。

糖尿病治療中の方、コレステロールが高い方、ダイエット中の方、高血圧が心配な方、便秘がちの方、便が細い方は食物繊維をサプリメントとして摂取することをお勧めします。
興味のある方はご相談ください。

2012.06.17更新

耳鳴・肩こり・脊柱管狭窄症でお悩みの方へ

当院では頑固な耳鳴りや肩こり、脊柱管狭窄症による腰痛や下肢の痛みに対してプラセンタのツボ注射をお勧めしています。

耳鳴のツボは、大渓(足の内くるぶしの後方)、腎兪(第三腰椎の両側)、風池(耳の後ろ側)、天柱(後頸部のぼんのくぼの両側)など足から頸部まで広い範囲に分布しています。

肩こりのツボは、肩井(頸椎の両側=肩関節と後頭部を結ぶ筋肉の上)、天柱(後頸部のぼんのくぼの両側)、膏肓(背部 胸椎の両側)など頸部から背部にかけて分布しています。手三里(肘関節の数センチ下の親指側)、合谷(親指と人差し指の間)など、腕や手にもツボがあります。

脊柱管狭窄症のツボは、八髎穴(仙腸関節に沿った左右4つずつ、計8か所の仙骨の穴)、腰宜(左右の腸骨稜の突端)、胞膏・秩辺(仙腸関節の外側5cm)、腎兪(第3腰椎の両側)などがあります。

これらのツボに、週1回程度の頻度で1か所につき0.5cc前後のプラセンタを注射します。非常に細い針を使用しますので、注射による痛みは軽微です。
数回で効果が表れる方が多いですが、中には最初は効果がないものの、数カ月たって効果が明らかになってくる方もいて、かなり個人差があるようです。

いずれにせよ、プラセンタのツボ注射はいろいろな治療をしても解決しない耳鳴り、肩こり、脊柱管狭窄症の打開策となりうる治療法です。

  • 院長ブログ
  • スタッフブログ
  • 小早川医院 Facebook
  • インスタグラム
  • 公式LINEアカウント
  • 052-752-0800
  • メールでのお問い合わせ
pagetop