2014.08.17更新
更年期障害や骨粗鬆症に効くスーパーイソフラボン: エクオール
大豆イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをすることが知られています。大豆製品を食べると、大豆に含まれるイソフラボンの一種が腸内細菌の力を借りて「エクオール」に変化します。このエクオールは年齢とともに減ってゆく女性ホルモンの働きを補う作用が非常に強いのです。
エクオールは、女性ホルモンが減ることで起こる不調、たとえばホットフラッシュ(上半身のほてり)や発汗などの更年期症状、骨粗鬆症、メタボや高血圧などの生活習慣病、皮膚のしわ、たるみなどに有効です。
ここで注意しなければいけないことは、大豆製品を食べればエクオールが増えるとは限らないということです。腸内細菌の状態によってエクオールを作ることができる人とできない人がいるからです。エクオールを作る能力のある人の割合は、大豆製品を多く摂取する日本人で50%、摂取量の少ない欧米人では30%程度にしかすぎないことがわかっています。
エクオールを作る能力があるか否かは、名古屋大学発のベンチャー企業: 株式会社ヘルスケアシステムズの「ソイチェック」という尿検査キットで簡単に調べることができます(費用は自費で3800円(税別)です)。この検査でエクオールを作れていると判定された方は、腸内細菌がうまく働いているわけですから、毎日大豆製品を摂取して、エクオールを減らさないようにすることが大切です。
エクオールを作れていないと判定された方は、腸内細菌の活動が不十分であるということになります。エクオールを作ることができる腸内環境づくりのために、大豆製品を毎日摂取すること、食物繊維の摂取量を増やすことが大切です。牛乳を豆乳に替えてみる、白米を雑穀米にしてみる、みそ汁の具に豆腐を加える、納豆を毎日食べるなどの工夫をしてみてはどうでしょうか。
エクオールを作れていない方、作れていてもなかなか大豆製品が摂取できない方には大塚製薬のエクオールのサプリメント「エクエル」をお勧めします。1か月分の費用は自費で4000円(税抜き)ですから、経済的にも比較的手ごろなサプリメントです。副作用はほとんどなく、更年期症状や骨代謝、美肌に対してかなり有効であるというデータが出ています。
エクエルはプラセンタや漢方薬と並んで、更年期以降の女性の強い味方になるでしょう。
ソイチェック、エクエルに興味のある方はお気軽に当院にご相談ください。
2014.08.08更新
認知症=もの忘れではありません!
一般的に認知症イコールもの忘れというイメージが強いようですが、認知症の症状はもの忘れだけではありません。
3大変性系認知症と呼ばれているアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、ピック病ではそれぞれに特徴的な症状が見られます。頻度は45%、23%、8%程度です。.
これら3大認知症の特徴を一言で表すと次のようになります。
アルツハイマー型認知症:数分前のことを思い出せない人
レビー小体型認知症: 夢の世界にいて歩けない人
ピック病: 身勝手で怒りっぽい人
アルツハイマー型認知症は海馬が萎縮してしまって数分前のことも忘れてしまうことが特徴ですから、多くの人が抱くイメージどおりの認知症です。アルツハイマー型認知症の6割は問題行動がなく記憶障害だけの患者さんです。
これと対照的なのがピック病で、もの忘れが軽く行動障害(反社会的行為、スイッチが入ったように怒る、同じ運動を繰り返す、過食など)が主体になります。
レビー小体型知症は声が小さく幻視や妄想があるのが特徴で、パーキンソンン病に似た歩行障害やうつ状態を合併することが多いです。
見方を変えると、エネルギーが有り余っているのがピック病、低下しているのがレビー小体型認知症、その中間がアルツハイマー型認知症ということになります。
このようにそれぞれの認知症の特徴をつかんでおくと、周囲の人の認知症の早期発見、早期治療につながります。
また、認知症のご家族が現在受けている治療が適切なものかどうかを判断する材料にもなります。
2014.07.27更新
認知症に対するグルタチオン点滴の効果
7月6日のブログでもご説明した通り、認知症の発症には酸化ストレス(体の錆びつき)が大きくかかわっていることがわかっており、抗酸化療法(体の錆びつきを抑える治療)の効果が期待されます。
当院では、強力な抗酸化力を持つグルタチオンとビタミンCの点滴を認知症の治療に用いています。
この点滴療法は、レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症(ピック病)の歩行障害に特に有効です。ご家族に両手をひかれて何とか歩いて診察室に入ってきた患者さんが15分間の点滴が終わると、何の介助もなしにすたすたと歩き始めることもあります。こういう時はスタッフ一同、顔を見合わせて喜んでいます。医者冥利に尽きる瞬間です。
認知症の治療薬を服用していても歩行障害が悪化していくような場合には、試してみる価値のある治療法です。ぜひご相談ください。
2014.07.22更新
糖尿病に関する院長のコメントが中日新聞に掲載されました
先月末に大阪で起きた糖尿病治療中の男性が運転する乗用車の暴走事故に関して、中日新聞の取材を受けました。今日の朝刊にその記事が掲載されましたので、その全文を引用します。
『 糖尿病 薬頼り過ぎ注意・・食事療法 原点に戻って
大阪市の繁華街で六月末、ワゴン車が暴走して通行人三人が重軽傷を負った事故。運転していた男性(65)は糖尿病で、事故当時は低血糖で意識がもうろうとしており、危険運転致傷容疑で逮捕された。薬の効き過ぎによる低血糖の疑いがあるという。患者が常に食事の質や量、運動を一定にするのは難しく、治療を薬に頼るほど低血糖の危険性が高まる。低血糖が認知症や死亡のリスクを高めることも明らかになりつつあり、専門家は「食事療法の原点に立ち返るべきだ」と指摘する。)
血糖値は通常、一定に保たれているが、甘い物やご飯、パン、麺類などの糖質を食べると数値が上がる。糖尿病は上がり過ぎた血糖を下げる体の機能が悪くなり、高血糖が続いて多様な合併症を引き起こす。これを避けるため、食事療法や薬物療法で血糖を制御する治療が行われている。
低血糖の多くは薬で起こる。一般的に患者は服薬の際、医師から決まった時間に指示されたカロリー分を食べ、決まった時間にインスリンや経口血糖降下剤など一定量の薬を使うよう指導される。問題は、実生活でこれを忠実に実行できるかどうかだ。
食事量の違いや食事の間隔のほか、同じカロリーでも、血糖値がほとんど上がらない焼き肉と、逆に上がりやすい白米では大きな差がある。このため、血糖がそれほど上がらなかった場合に薬を規定量使うと、薬が効きすぎて低血糖を起こしやすくなる。
軽症では冷や汗や手足の震え、動悸、不快感などが現れる。重くなると、集中力低下や強い眠気、めまいに襲われ、最悪の場合はけいれんや意識消失を起こす。このため患者は軽症のうちに、事前に用意したブドウ糖や糖分を含む食べ物を摂取して対処するよう指導されている。
薬の量が多めに設定されやすい背景があると、糖尿病治療に力を入れる小早川医院(名古屋市昭和区)の小早川裕之院長は指摘。理由は「皮肉にも低血糖を起こすほど、糖尿病の指標となるグリコヘモグロビン値(HbA1c)が改善するため」。ひと昔前までは、血糖を下げるのを優先し、「ある程度の低血糖は仕方がない」という風潮があったという。
しかし、近年の研究で低血糖が引き起こす危険性に注目が高まっている。権威ある英医学誌「ランセット」に二〇一〇年に掲載された論文は、インスリンの働きが弱くなった糖尿病患者約二万八千人の長期追跡調査を報告。高くなったHbA1cの値を薬で下げると、ある値までは死亡リスクが下がるが、それよりさらに健常者の値に近づけようとすると、逆に高まってしまうことを示した。
増えた死因は脳卒中や狭心症などの血管疾患。論文は、低血糖が血管障害を促したと考察している。このほか、低血糖発作を繰り返すほど認知症になる確率が高まることを報告する論文や、血糖値の大きな変動が血管障害を引き起こすといった論文が相次いでいる。
小早川さんは「血糖が上がる食事を治療の前提とするのではなく、糖質摂取量を抑えた血糖を上げない食事で薬の量を減らす」という方針で診療。多くの患者でHbA1c値を改善させ、低血糖も防いでいる。「来院した患者で結局、薬が不要だった事例も。副作用のない食事療法のメリットは大きい」と話す。ただ、食事療法に伴う薬の見直しをするには、それに詳しい医師の指導が欠かせない。
自動車運転死傷処罰法と無自覚性低血糖症
飲酒運転など悪質な運転で死傷事故を起こしても、刑法の危険運転致死傷罪の適用が見送られるケースがあったため、新たに自動車運転死傷処罰法が五月に施行された。新法では「無自覚性の低血糖症」の患者が事故を起こし、人を死傷させた場合でも、致死で十五年以下、致傷十二年以下の懲役に問うことができる。無自覚性では、低血糖が起きても発汗や震えなどの初期症状が出にくく、本人が自覚できない。突然、意識障害や昏睡に陥るために危険度は高い。糖尿病を長期間患い、自律神経障害になった人や、低血糖を頻繁に繰り返した人に起こりやすい。』
今回の取材では、今までこのブログで繰り返し強調してきたことをまとめてお話ししました。担当の記者も健康維持のために糖質制限を実践しておられるとのことで、私の話に共感していただけたようです。
まずは食事療法(糖質制限)、次は低血糖を起こさない最小限の薬物療法(メトフォルミン・DPP4阻害薬など)というのが健康長寿への近道です!
2014.07.19更新
健康基準が変わった??
今年4月に人間ドック学会が新たな健診データの基準範囲を発表しました。この中で、血圧やLDL-コレステロールの基準範囲が従来よりもかなり緩くなったため、週刊誌や新聞などの報道機関が一斉に「健康基準を緩和」、「健康な人が増える」などとセンセーショナルな報道を繰り広げました。
これ以降、全国の医療機関で高血圧や脂質異常症で治療中の患者さんが「薬をやめたい」、「薬を減らしてほしい」、「本当に治療が必要なのか?」と訴えられるケースが増えています。私も何人かの患者さんから質問を受けました。
私はそのような場合、次のようにご説明しています。
「今回の新基準は、血圧/LDLコレステロール以外の検査項目で異常がなく、病気と診断されてもいない、現時点で一見健康な人を集めて、その人たちの検査データの範囲を基準範囲と定めたものです。将来の心筋梗塞や脳卒中を予防するための基準ではありません。血圧もLDLコレステロールも高くなればなるほど将来心血管系の病気を発症する確率が高くなることは多くの研究で明らかにされた事実です。我々臨床医は将来病気になるリスクを重視して治療をしているので、この新基準が出たからと言って今までの治療目標値が変わることはありません。」
どうか、マスコミの的外れな報道に惑わされず、冷静に治療を続けていただきたいと思います。
2014.07.15更新
スマートフォンサイトをオープンしました
いつも当院のウェブサイトをご覧いただき、ありがとうございます。
早いもので、当サイトをオープンしてから3年近くが経過しようとしています。
この間、糖尿病をはじめとする生活習慣病に関する情報を積極的に発信し、徐々に多くの方に見ていただけるようになってきましたが、最近では、スマートフォンによるアクセスが全アクセス数の30%以上を占めています。
現在のウェブサイトは、スマートフォンで開くと字が小さくて読みにくいとのご意見もいただくようになりました。
そこで、このたびスマートフォン専用のサイトをオープンしました。内容はPC用のものとほぼ同じです。ブログも全く同じ内容のものを読んでいただくことができます。URLもPCと同じhttps://kobayakawa-dm.comです。
ぜひご活用ください!
2014.07.06更新
認知症・糖尿病・パーキンソン病は「身体の錆び」が原因!
「身体が錆びる」というような表現を目にすることが多くなりました。今日はこの言葉の意味についてお話ししたいと思います。
人間の身体は無数の細胞からできており、それぞれの細胞の代謝によって生命を維持するのに必要なエネルギーが生み出されます。その一方で、細胞の代謝の結果として、他の物質を酸化する力が非常に強い「活性酸素」も作られるのです。放射線、化学物質、紫外線、ストレスなどの外界からの刺激によって活性酸素はさらにたくさん作られるようになります。そしてこれが、脂質だけでなくたんぱく質、炭水化物、アミノ酸、酵素など細胞内のあらゆる分子を「錆びさせる= 酸化する」わけです。最終的には細胞内の遺伝子まで錆びさせてしまい、細胞の正常な働きを失わせることになります。
当然、活性酸素はいろいろな病気をひき起こします。パーキンソン病、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経系の変性疾患との関連が明らかになっています。また、糖尿病、肥満、心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化症、癌、膵炎、クローン病、関節リウマチ、白内障など多くの疾患の誘因となることがわかっています。そして、今話題の老化にも、この活性酸素による「身体の錆びつき」が大きくかかわっているのです。
それでは、活性酸素による「身体の錆びつき」を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?そのためには抗酸化作用を持った物質=抗酸化物質を補う必要があります。本来人間の体内で作られる抗酸化物質としてはアルブミン、尿酸、還元型グルタチオンなどがあり、体内で作られない抗酸化物質としてはビタミンE、βカロテン、ビタミンC、ポリフェノールなどがあります。
当院では、これらの物質の中でも特に強力な抗酸化力を持つグルタチオンとビタミンCに注目し、認知症やパーキンソン病など神経系の変性疾患の治療に用いています。また、アンチエイジングの目的でも使用しています。
近日中に、グルタチオンとビタミンCの点滴療法の素晴らしい効果について、ブログにアップする予定です。
ご期待ください!
2014.07.02更新
糖尿病の新たな合併症・・認知症・癌!!
ご無沙汰しております。半年ほど、院長ブログの更新をできずにおりました。申し訳ありません。
当院ではここ数年来、糖質制限食を柱とする糖尿病治療を行い、良好な治療成績が得られています。しかし、同時に糖尿病患者さんの中に認知症を発症する方や癌を患う方が徐々に増えてきました。
最近の大規模研究で、糖尿病は認知症の発症リスクを1.5~2.5倍も上昇させることがわかっています。
また、糖尿病の患者さんが癌で亡くなるリスクは糖尿病でない人に比べて30%~70%も増えることも明らかにされています。中でも膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、腎臓癌、胃癌、子宮癌などの腹部の癌が増えます。
糖尿病の血管合併症は血糖、脂質、血圧などのコントロールをしっかりやればかなり予防できるようになってきているので、現代の糖尿病患者さんにとってむしろ厄介な合併症は認知症と癌といっても過言ではないと思います。
当院では糖尿病の治療と同時に、認知症の予防・治療と癌の早期発見を新しい診療の柱と位置づけています。
この半年間は、認知症の予防・治療に関する情報や知識を蓄積するのに多くのエネルギーを使いました。その分、ブログの更新はもっぱら管理栄養士さん任せになってしまったというわけです。
今後は、この半年間に蓄積した情報を少しずつブログに載せていきますので、ご期待ください。
また、腹部の癌の早期発見のため、8月より優秀な超音波(エコー)検査の技師さんに定期的に来ていただけることになりました。詳細は後日お知らせします。
2013.12.31更新
1年間、ご愛読ありがとうございました
今年も当院のブログを読んでいただき、ありがとうございました。
「生活習慣病専門サイト」として新しいウェブサイトを立ち上げて2年目となった今年は、昨年以上に多くの方が当サイトにアクセスしていただいたようです。
糖質制限食、ABC検診、ピロリ菌の除菌治療、サプリメントを用いた栄養療法、プラセンタ療法、認知症の治療など、当院が注力している分野が、このサイトを通じて多くの方々に認知され、遠方から来院される方も増えてきました。
糖質制限食の導入によって、ストレスなく多くの患者さんの血糖コントロールを改善することができ、薬剤も減量することができました。
プラセンタ療法は、他の治療法でなかなか改善しなかった更年期障害や腰痛、肩こり、脊柱管狭窄症などのつらい症状を軽減するのに非常に効果的でした。
最近新たに発売された3種類の認知症治療薬、フェルガードやイチョウ葉エキスなどのサプリメント、向精神薬などを駆使することにより、介護するご家族の負担を軽減する認知症治療が可能になりました。
今後も、患者さんやそのご家族が笑顔になれるような治療を心がけてゆきたいと考えております。当サイトでは、そのためのフレッシュな情報をどんどん発信していきます。
来年もご愛読よろしくお願いいたします。
2013.12.15更新
糖尿病予防に「シリアル」の食物繊維が効果的
糖尿病予防に食物繊維の摂取が有効であるといわれていますが、実際には、研究の結果は肯定的なものと否定的なものが混在しており、結論は出ていません。
中国の国立栄養・食品安全性研究所の.Rong氏らは12月2日からメルボルンで開催された世界糖尿病会議で、この問題に関する新しい知見を発表しました。
Rong氏らは食物繊維の種類別に摂取量と糖尿病の発症リスクの関連を調べた15の研究(対象者48万7667人)を解析しました。その結果、各種の食物繊維の中で、穀物からなるシリアルの摂取が最も糖尿病のリスクを減少させることがわかりました。具体的には、1日10gのシリアル由来の食物繊維の摂取でリスクが30%も低下することが示されました。
果物、野菜、豆類の食物繊維に関しては、糖尿病の発症リスクを低下させるという結論は得られませんでした。
シリアルというとコーンフレークやオートミールですが、穀物由来の食物繊維を摂取するという意味では、玄米や麦飯、雑穀米なども効果があるでしょう。
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