2012.11.25更新
フェルラ酸・・・期待の認知症予防・改善物質(その2)
フェルラ酸は植物の細胞壁を構成するポリフェノールの一種です。強い抗酸化作用を持ち、活性酸素を除去します。また、解毒作用や抗炎症作用もあります。
当初は化学合成でしか製造できなかったフェルラ酸ですが、和歌山県工業技術センターが、日本人の主食であるお米の精米過程で得られる大量の米ぬかから効率よく抽出する技術を開発することに成功しました。これによりフェルラ酸が容易に利用できるようになりました。
最近10数年の間に、フェルラ酸が脳機能を改善する作用を持つという研究結果がが次々と発表されました。
2001年にはアルツハイマー型認知症のマウスにフェルラ酸を投与すると認知症が回復することが報告されました。
2005年から2006年にかけては、アルツハイマー型認知症の原因物質であるβアミロイドによる脳内の炎症をフェルラ酸が抑えるとい研究結果が世界中から報告されました。
これらの研究成果は動物実験によるものではありますが、フェルラ酸が人間の認知症治療にも有効であることを示唆しています。
当院でもフェルラ酸を含有したサプリメントが、認知症の予防、治療に有効であるという感触を得ています。費用は1か月分6000円~10000円程度です。
物忘れでお悩みの方、ご家族の認知症が心配な方は気軽にご相談ください。
2012.11.11更新
ホスファチジルコリン・・・期待の認知症予防・改善物質
人間の脳の中で「海馬」と呼ばれる部分は学習・記憶をつかさどっています。海馬は年齢とともに萎縮して行きますが、特に60歳を過ぎると萎縮が進行しやすくなります。それと並行して、認知機能検査(物忘れのテスト)の点数も急激に低下します。これらの事実から考えると、60歳ごろからは誰でも認知症予防に取り組む必要があると言えます。
最近「POホスファチジルコリン/ DLホスファチジルコリン」に学習・記憶の機能を向上させる作用があることが発見され、認知症予防・治療のためのサプリメントとして期待が高まっています。
POホスファチジルコリンは記憶の機能を向上させる作用があります。既存の認知症治療薬が効かないような例でも効果がみられることがあります。また、従来認知症のサプリメントとして用いられてきたイチョウ葉エキスよりも認知機能の改善効果は大きいようです。
DLホスファチジルコリンは学習機能向上に優れた効果を発揮します。
POホスファチジルコリンとDLホスファチジルコリンの併用でより効果的な認知機能の改善が期待できます。
当院でもこの「POホスファチジルコリンDLホスファチジルコリン」のサプリメント「エグノリジンS」を取り扱うことになりました。このサプリメントは卵黄と大豆という天然食品を原料として作られているため、安全性も高いと言えます。費用は1か月分が12600円です。
認知症を予防したいと思っている方、最近物忘れが気になりだした方はぜひご相談ください。
2012.11.06更新
認知症の薬物療法
脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解力・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるもので、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。
本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因が絡み合って、うつ状態や妄想といった精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題(BPSD)が起こってきます。これらを周辺症状と呼びます。
中核症状の進行を遅らせる効果のある薬剤は2010年までは1種類だけでしたが、2011年より3種類のお薬が発売され、治療の選択肢が格段に増えました。
周辺症状を改善するために、向精神薬や睡眠薬、安定剤、漢方薬などが使用されることもあります。
まだ認知症の特効薬と言えるものはありませんが、これらの薬剤を適切に組み合わせて治療することにより、かなり効果が期待できるようになってきています。
但し、治療は軽症のうちに始めるほど効果が大きいので、早期発見早期治療が大切です。
また、動脈硬化は認知症を悪化させるので高血圧、糖尿病、脂質異常症をしっかりと治療することも重要です。
認知症に対するワクチン療法も現在開発されつつあります。
2012.10.30更新
厳しい糖質制限(低炭水化物)食は危険です!・・・その2
10月18日のブログで、厳しい糖質制限(低炭水化物)食の危険性を裏付ける臨床的なデータをお示ししました。
今回は厳しい糖質制限は危険であることを強く示唆する動物実験を用いた研究をご紹介します。
これは、基礎医学分野の一流の専門誌であるProceeding National Academic Science に2009年に掲載されたものです。
この研究では、動脈硬化のモデルマウス(ApoEマウス)に①低炭水化物高蛋白食(P:F:C(%)=45:43:12) 、②一般的な西洋式の食事(P:F:C(%)=15:42:43)、③高炭水化物食(P:F:C=20:15:65%) をそれぞれ12週間(ヒトに換算すると約6年間)食べさせて動脈硬化の経過がどうなるかを、様々な角度から分析しています。ここで②は現代のアメリカの一般的な食事、③は日本食に近いと考えてよいでしょう。
結果は次のようになりました。
1.脂質、血糖値は3つの群で差がなかった。
2.にもかかわらず、大動脈を解剖した時の動脈硬化の範囲は①では②、③に比べて明らかに広かった。
3.①の群のマウスでは、血管を再生させる能力が明らかに低かった。
4.低炭水化物高蛋白食は動脈硬化を促進するが、その原因は脂肪ではなく蛋白質であろう。
これらの結果が意味するところは、厳しい炭水化物制限で蛋白質が増えると、コレステロールや中性脂肪が高くなくても動脈硬化が進行し、その結果として脳梗塞、心筋梗塞などの心血管合併症がおこる可能性が高いということです。
この研究は10月18日のブログでご紹介した臨床研究とともに、厳しい糖質制限(低炭水化物)食は危険であることの有力な証拠であると考えています。
2012.10.29更新
注目のサプリメント ビタミンD
ビタミンDは以前は単に「骨の健康に役立つビタミン」として比較的地味な存在だったのですが、2010年に慈恵医大の研究グループが「ビタミンDの摂取によりインフルエンザにかかりにくくなる」という研究成果を発表して以来、がぜん注目を集めています。
それ以降、ビタミンDの効能について以下の様な報告が相次いでなされています。
・インフルエンザなどの感染症にかかりにくくする。
・風邪の予防にも効果がある。
・花粉症などのアレルギー症状を軽減させる。
・大腸がん、すい臓がん、乳がん、卵巣がんなどのリスクを低下させる可能性がある。
・アルツハイマー病のリスクを低下させる可能性がある。
これから冬にかけては空気が乾燥し、風邪やインフルエンザの流行が気になる季節でもあります。また、今年の夏の猛暑の影響により、来シーズンののスギ花粉の飛散量は今シーズンの約6倍に増えると予想されています。
ぜひビタミンDを試してみてください。
2012.10.21更新
日本ローカーボ食研究会の第4回勉強会に参加しました
昨日(10月20日)、名古屋駅にほど近い名古屋プライムセントラルタワーで日本ローカーボ食研究会の第4回勉強会が開催されました。今回は二人の先生が講演されました。
最初に灰本クリニックの灰本 元先生が科学的データに基づいたローカーボ(糖質制限)食の最新の戦略を話されました。先生は、厳しい糖質制限は総死亡を増やし危険であることを示され、植物性脂肪・タンパク質を中心にしたゆるやかなローカーボ(糖質制限)食こそが安全かつ有効な治療法であることを強調されました。
次に、東京都健康長寿センターの荒木 厚先生が高齢者糖尿病について講演されました。先生は低血糖の頻度が多いほど、総死亡や認知症が増えること、また血糖変動が大きいほど冠動脈疾患や認知症が増えるというデータを示されました。一方、血糖コントロールが悪いほど認知症になりやすいというデータも示されました。
やはり、糖尿病の治療は血糖変動をできるだけ小さくしつつ(低血糖と食後高血糖を避ける)HbA1cを下げる必要があると感じました。この点で糖質制限とビグアナイド系薬剤やDPP-4阻害薬などの低血糖のリスクの少ない内服薬の併用が最も合理的な治療法だと思います。
今回の勉強会は用意された座席だけでは足りなくなるほど参加者が多く、非常に盛況でした。糖質制限食への関心が高まっていることを実感しました。
2012.10.20更新
ゆるやかな糖質制限(低炭水化物)食は安全!
前回のブログで厳しい糖質制限で総死亡が増えることをお伝えしました。
一方で、ゆるやかな糖質制限(低炭水化物)食は安全であるという大規模研究の結果がいくつか出てきています。
以前のブログでも取り上げましたが、ハーバード大学からは13万人ものアメリカ人を対象に26年間もの長期にわたって追跡した壮大な大規模研究の成果が報告されています。
これによると、厳しい糖質制限を実践すると動物性脂肪・タンパク質を中心に摂取するようになり、総死亡およびガンによる死亡が明らかに増加するが、ゆるやかな糖質制限では植物性脂肪・タンパク質の摂取が中心となり、総死亡は減少、ガンによる死亡は不変という結果でした。
またスウェーデンの3.7万人を10年間も追跡した大規模研究では、炭水化物比率55%のカロリー制限食と炭水化物比率45%のゆるやかな糖質制限食ではl総死亡に差がないことが示されました。
これらの結果から、炭水化物比率40~45%のゆるやかな糖質制限食(1~1.5食制限)は安全であると言えます。
当クリニックでは、HbA1c9.0未満の糖尿病には基本的に1CARD(1食制限)をお勧めしています。
2012.10.18更新
厳しい糖質制限(低炭水化物)食は危険です!
最近、糖質制限(低炭水化物)食がマスコミで取り上げられることが多くなり、ちょっとしたブームの様相を呈しています。書店には糖質制限食のコーナーが設けられているところさえあります。外来をやっていると、患者さんから「テレビ番組で糖質制限の特集をやっているのを見ました」という話を聞かされることも多くなりました。
私も含め、糖質制限食を普及させたいと願っている者にとっては一見喜ばしいことのようですが、実態はそうではありません。なぜなら、ほとんどの場合、「炭水化物を減らせば減らすほど良い」、「炭水化物は身体に毒である」というような取り上げ方をされており、毎食炭水化物を抜く、あるいは1日の炭水化物摂取量を130g以下に抑えるなどといった厳しい糖質制限食が推奨されているからです。
世界の趨勢はこれとは逆の方向に向かっています。欧米では厳しい糖質制限は危険であることを証明する論文が数多く発表されています。2007年に発表されたスウェーデンとギリシャの研究は、ともに2万人もの人をそれぞれ12年と4年にわたって追跡するという非常にスケールの大きなものです。
これらの研究によると、炭水化物摂取量をカロリー比で35%(1日2食で炭水化物を抜いた場合に相当します)まで下げると総死亡は7割も増えたという結果が出ています。厳しい糖質制限をしてたとえ血糖や体重が下がったとしても、他の病気を併発して寿命が縮まってしまっては意味がありません!・・・次回に続く
2012.10.08更新
認知症予防のポイント
今日は、認知症予防のための日常生活でのポイントをまとめてみました。
1.積極的に会話する
家族や友人、隣人と声を出してしゃべることにより脳が活性化します。
2.旅行など楽しい計画を立てる
旅行、観劇、音楽鑑賞、ショッピングなど楽しい計画を立てるのも有効です。
3.趣味を持つ
日々の楽しみを持つことも大切です。なんでも良いのですが、歌を歌う、楽器を演奏する、文章を書く、絵を描くなど、自分を表現するような趣味はとくに有効です。
4.良く噛んで食事をする
食事の時に良く噛むことによって脳が活性化されます。入れ歯よりも自分の歯でかむ方がより有効です。ですから、歯の衛生にも気をつけて、できるだけ自分の歯をたくさん残しておく努力も大切です。
5.過度の飲酒を控え、規則正しい生活をする
メリハリのある生活をし、質の良い睡眠をとることも大切です。
6.指先を使う
パソコンやピアノ、手芸、書道など指先を使う作業が脳を活性化します。
2012.09.24更新
どの程度の糖質制限が適切か?
最近、糖質制限がマスコミに取り上げられる機会が増え、ちょっとしたブームの様相を呈しています。書店で糖質制限に関する雑誌や書籍を目にすることも多くなりました。その内容は多くの場合、糖質(炭水化物)を摂取することを罪悪のようにとらえ、3食とも炭水化物を抜く、あるいは一日の炭水化物摂取量を130g以内に抑えるなど、厳しい糖質制限を推奨しており、あたかも糖質制限が万能の食事療法であるかのような表現がなされています。私はこのような状況に危機感を感じています。三大栄養素の一角を占める炭水化物は摂取していけないのではなく、適切な量を摂取すべきなのです。
昨日のブログでご紹介したスウェーデンの大規模研究をはじめとして、糖質制限(低炭水化物)食を厳しくすればするほど総死亡、心血管病の発症やそれによる死亡、癌の発症やそれによる死亡が増えるという報告が次々となされています。ハーバードのFungらの研究では植物性脂肪・タンパク質中心の糖質制限を行えば、このような弊害はないことが明らかになっていますが、糖質制限を厳しくすればするほど動物性脂肪・タンパク質の比重が高くなりがちであることを考えると、やはり無駄な糖質制限は危険です。
それでは、どの程度の糖質制限が適切なのでしょうか?この点に関しては、日本ローカーボ食研究会理事の灰本先生が立派な研究をされています。この研究では、HbA1c<9.0%の患者さんたちには夕食のみの炭水化物制限(1CARD), HbA1c≧9.0%の患者さんたちには朝食と夕食の炭水化物制限(2CARD)を指導しています。1CARDを指導した患者さんたちの平均HbA1cは7.3%, 2CARDを指導した患者さんたちの平均HbA1cは10.6%と大きな差があったにもかかわらず、1年後の平均HbA1cはそれぞれ6.6%, 7.0%とまずまずの値におさまっていました。この結果は、糖尿病の重症度に応じて糖質制限の程度を決めることにより、良好なコントロールを達成できることを示しています。
糖質制限は医師や栄養士の指示に従い、必要最小限の程度にとどめるべきです。民間療法的な極端な糖質制限は避けるべきであると考えています。
ARTICLE
SEARCH
ARCHIVE
- 2024年7月 (3)
- 2024年3月 (1)
- 2024年1月 (3)
- 2023年11月 (1)
- 2020年4月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2017年1月 (1)
- 2016年7月 (2)
- 2016年6月 (4)
- 2016年4月 (1)
- 2016年2月 (2)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (2)
- 2015年11月 (3)
- 2015年5月 (6)
- 2015年4月 (5)
- 2015年3月 (1)
- 2015年2月 (5)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (3)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (5)
- 2014年9月 (3)
- 2014年8月 (6)
- 2014年7月 (6)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (7)
- 2013年10月 (8)
- 2013年9月 (7)
- 2013年8月 (8)
- 2013年7月 (7)
- 2013年6月 (6)
- 2013年5月 (8)
- 2013年4月 (5)
- 2013年3月 (5)
- 2013年2月 (8)
- 2013年1月 (8)
- 2012年12月 (8)
- 2012年11月 (7)
- 2012年10月 (6)
- 2012年9月 (5)
- 2012年8月 (5)
- 2012年7月 (17)
- 2012年6月 (9)
- 2012年5月 (9)
- 2012年4月 (4)
- 2012年3月 (14)
- 2012年2月 (7)
- 2012年1月 (4)
- 2011年12月 (4)
- 2011年11月 (1)